イスラム国(ISIS)の支持者は、テレグラムを利用してパリ同時多発テロ事件の犯行声明を発信し、互いの連絡にも利用していたと見られる。ロシア人の創業者のパヴェル・デュロフ氏は、クレムリンの支配下から逃れ、自由なコミュニケーションを図る場として2013年にテレグラムをスタートさせた。全てのプライバシー情報は、高度に暗号化されたネットワークによって守られている。同社は、そのFAQページでも、「WhatsAppやLINEのようなマスマーケット相手のメッセージアプリと比較して、より高い安全性が保たれている」としている。
デュロフ氏は、「たとえそれがテロリスト同士で行われたやり取りだったとしても、政府当局に裏でそれらの情報を提供することは同社のプライバシー・ポリシーを侵害する行為で、この部分で譲歩するつもりはない」と過去にも発言していた。しかし、ISIS関係のチャンネルに関しては何らかの対処をせざるを得ない状況になった。
「ISISがプロパガンダを広める目的でテレグラムのパブリックチャンネルを利用したことを知り、非常に困惑しています。abuse@telegram.org を通じて届けられる情報を精査し、この様なかたちでチャンネルが悪用されるのを阻止するための措置をとる所存です」とテレグラムは声明で述べた。
同社はISISのプロパガンダに関係する、78のチャンネルを既に閉鎖しているが、パヴェル・デュロフ氏はコメントに応じていない。
チャンネルをシャットダウンされたISISの支持者の間では、既に反発の動きが出ている。テレグラム上のISIS支持者を追跡してきた英シンクタンク「キリアム財団」のチャーリー・ウィンター氏は、テレグラムを頻繁に利用していたISISユーザーが、「テレグラムでも戦争が勃発したと発言した」と述べた。また、他のチャンネルでは次の様なメッセージも残されていた。
「テレグラムはカーフィル(不信心者)の要求に屈し、イスラム国に戦争を仕掛けてきた。気を付けろ。これから先安全に利用できるものは無い。やつらは我々の情報を差し出すだろう。VPNサービスを使って、くれぐれも注意しろ。アラーのご加護を」
テレグラムはアプリ上で好ましくないコンテンツを見つけた際、ユーザーが簡単に報告できる方法を導入するとしている。しかし、1対1のチャットとグループチャットでは今後も従来通りのプライバシー保護体制をとるとしている。
同社は、知的財産権に関わる問題に関しては、現地の法律を遵守しつつ対処している。しかし、言論の自由に関しては次の様に述べている。
「テロリスト(ISIS関連)が悪用するチャンネルは断固として閉鎖しますが、 平和的な内容なら如何なるユーザーであろうと歓迎します」
ロイヤル・ユナイテッド・サーヴィシズ・防衛安全保障研究所(the Royal United Services Institute for Defence and Security Studies, RUSI)上席研究員イワン・ローソン氏は、ISISのプロパガンダを目的としたチャンネルの閉鎖によって、支持者らが小数のコミュニケーションチャンネルに逃げる可能性があると指摘した。そうすれば当局が彼らを追跡して捕らえやすくなるというのだ。
「ターゲットが小さくなれば、インターネット上の諜報活動は有利になる」