2016年にビジネスに影響を及ぼし得るのはどのような脅威だとみられるのか、幅広い分野のアナリストに話を聞いた。その結果、政治的リスクとして注目すべき問題と考えられる9つの事柄を以下に紹介する。
1. 中南米の右傾化
中南米については、ボリビアやキューバ、ベネズエラなどの左傾化が報じられてきた。だが、各国の経済が減速する中、大衆主義者や左派の間でも右傾化がみられ、最近の選挙では右派政党が勝利している。
2. アフリカで続く経済不安
市場は今後、この大陸で「将来の」リスクに直面するのかもしれない。アフリカの複数の国で、食品価格の高騰による暴動の可能性が大きな脅威となっている。経済が停滞する中、南部ではエルニーニョ現象の影響による干ばつですでに食品価格が上昇しており、2016年には生活必需品の価格にも大きな影響が出そうだ。
3. 力を背景とする米の外交政策
米国内では、自国と対立する国がオバマ政権のソフトパワーによる外交を弱腰姿勢とみており、米国はそれに付け込まれているとの見方が広がっている。2016年の大統領選に向け、各党の候補者はより強硬な外交政策が必要だと訴えている。
中国とロシアが、オバマ政権が軍事行動に消極的であることを最大限に利用していることは明らかだ。両国は米の政権交代前にできる限りのことをやっておくつもりだとみられている。
4. 強硬姿勢を強める中国
軍事・外交の両政策において、中国が自己主張を強めている。それが最も顕著なのが南シナ海だ。こうした中国の姿勢は、欧米企業の同国での事業を困難にするかもしれない。
5. 予測不能なロシア
シリアと「イスラム国」の問題で互いの支援を必要とする米露が協力姿勢に転じる可能性もあるとの意見がある一方で、ロシアは不確実性を生む存在であり、「ならず者国家」になるかもしれないとの見方もある。
6. 底値を打つ原油価格
石油輸出国機構(OPEC)は、先ごろの総会で減産を見送った。これを受け、原油価格は1バレル20ドルを下回るとも予測されている。原油価格が2016年の世界情勢を左右するとの指摘もある。
7. 「イスラム国」の挑戦が招く予期せぬ結果
欧州では、今年発生した一連のテロ攻撃による動揺が広がっている。「イスラム国」包囲網が強化される中、この問題は2016年も同地域の外交政策における最大の問題となるだろう。包囲網の一画をなす欧米とロシア、また対イスラム国連合を組む中東諸国で、テロの脅威が高まる可能性がある。
一連の軍事行動によって、地政学的構造が激変することもあり得る。そうなれば、事業環境は全く予測不可能になる。
8. 企業活動に対するサイバー攻撃
各国企業は、技術的な脆弱性を突くサイバー攻撃の脅威に直面している。データとシステムの「完全性」の維持に万全を尽くさない企業は、新たな脅威にさらされる可能性が高いが、大半の企業はリスクに無頓着だといわれる。
より悪意があるのは「妨害型」の攻撃だ。ハッキングにより企業のデジタル資産と物的資産の両方を破壊する。こうした攻撃を行うのは主に、国家の後押しを受けた集団、テロの代行者として活動する集団だ。
9. 核によるテロリズムの脅威
ハーバード大学の教授は2008年、出席した米連邦議会の上院公聴会で、テロリストが今後10年の間に核兵器を入手する可能性は29%だと述べた。
「イスラム国」のようなテロ集団が核兵器を入手すれば、それだけで世界を一変させてしまうのに十分だ。その脅威があるというだけでも、影響力は大きい。