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2015.12.11 14:00

ファイザーのアラガン買収:節税目的の本社移転を引き起こす法人税は変更すべき

Bacho / shutterstock

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政治経済学の合理的な一般ルールは、望まない結果を生むルールがあるなら、そのルールを見直してみるのがいいかもしれないというものだ。望む結果を得るためには、変更が必要かもしれない。これは、最近のファイザーによるアラガン買収に見られた節税目的の本社移転にも当てはまる。

本社が移転すると、企業はIRSの手の届かない所に行ってしまう。もし、税金を払っている企業はIRSの手の届かない所に行くべきではないと考えるなら、企業に手の届かない所に行きたいと思わせるルールを見直してみた方が良いかもしれない。言うまでもなく、本社移転を禁止することは可能であるが、企業に海外移転を指向させる原因となっているものは何か、まず理解するのが賢明だろう。

そして、その答えは明白だ。米国の法人税が他のどの国の法人税より、かなり高いからである。また、米国企業から支払われた配当は、それから諸外国の同様の配当よりも重い税金を課されるのである。これは、各国が研究開発などに与える様々な引当金などを考慮しても、事実なのである。さらに米国は、海外での収益が送金されてきた場合に課税し続けているが、多くの諸外国ではそのような取扱いはされていない。

これらの結果、米国企業の株価は、それらのルールがない場合に想定される水準より低くなっている。これは、企業にとって資本を調達するコストが、それらのルールがない場合よりも高い事を意味する。さらに標準的な理論によれば、将来の米国の成長が、潜在成長率よりも低くなることを意味する。単純なことで、資本が割高なので、投資される資本が少なくなるということだ。これは、私達が政策として望むことではないだろう。私達は将来、可能な限り豊かになりたいと望んでいる。

以上を考えれば、ニューヨーカー誌のジョン・キャシディによる批判は、やや的外れである。なぜなら、上記のようなことが、実際、本件についての標準的な見方であるからだ。

ファイザーのリード会長兼CEOは、アラガンとの合併提案を説明する声明の中で、これによってファイザーは「製薬業界において、より競争力を強化することができる」と述べている。これは、アストラゼネカ、グラクソ・スミスクライン、ノバルティス などの他の大手製薬会社が、米国より法人税の低い国に本社があることを指しているのである。しかしながら、米国に本拠を置くことによって、ファイザーが資本を調達するのが一層難しくなったとの証拠は殆ど無い。

難しいか?といえばおそらくそんなことはないが、より高くついたか?といえば、絶対にそうである。なぜなら、それが高い税金が資本に対するリターンに与える影響であり、資本費用をより高くするからである。彼の以下主張はなかなか素晴らしい。

米国に本社があるからといって、ファイザーが大儲けするのに支障がなかったことは確かである。過去2年間で、同社は、約190億ドルの純利益を生み出した。

その通りだ。だがしかし、それが問題なのである。引当金その他を考慮せずに、米国とアイルランドの税率だけで見ると、190億ドルに対する税金の違いは、なんと43億ドルになる。そして、率直に言おう。もし企業の経営陣が、43億円が道に落ちていて自由に拾うことができると知ったら、私達は、彼らがそうすると考えるのでないだろうか。

もちろん、それが現在行われつつあることだ。このことから、2点指摘できる。

第1点は経済的な論点であり、競争は良いということである。供給が独占されていると、非効率で消費者の利益にならないので良くない。需要が独占されていると、非効率で生産者の利益にならないので良くない。競争があれば、不利益な状況は起こりにくくなる。ただし、国家は、それぞれの国境の中では、定義により独占状態にある。その他は、ありようがない。したがって、私達は、国家間において税率などについて競争があることを望むのである。

なぜなら、競争によって人々が被る不利益が限定されるからである。マンサー・オルソンの政府に関するやや皮肉な見解に同意しなくても、私達から絞り上げたお金を、米国政府の方が私たちより全て有効に使えるわけではないことは理解できるであろう。

そして、標準的な税に関する経済学においては、法人税が税の中で最悪の形態の一つであることは全く疑問の余地がない。全ての税金は、経済活動にとって有害であるが、同じ税収であっても、より有害なタイプの税がある。法人課税はそのような税の筆頭であり、土地課税が最も問題が少なく、消費課税はその中間である。私達は、必要な税収をより問題の少ない課税方法で得るべきであり、企業よりも土地から取る方が望ましい。

そして、企業は土地よりも移動しやすく、そのため課税による経済への打撃は、企業に対する課税の方が大きいのである。なぜなら企業は、あまりに税負担が重ければ他へ行ってしまからである。これが、税に関する競争が望ましい理由である。それによって、政府が高率の法人税のような高い税率の悪税を課すのが制限されるからである。

第2のポイントは、本件がどう進展するかである。確かに、様々な人が、ファイザーは米国に留まって税金を支払うべきだと言っている。しかしながら、もしファイザーにとって税制上の取扱が問題なのであれば、私たちは取扱を変更すべきなのかもしれない。例えば、他の国々が税率を下げた方法を考慮して、米国の法人税率を引き下げるべきだろう。

つまり、人々がその国から逃げ出しているのは、その国が何か間違ったことをしている証拠である。だから、間違ったことを止めようではないか。
もし、 ブリトニー・スピアーズが延々と大音響で流されているために、美味しい七面鳥があるのに、人々が感謝祭のディナーから逃げ出し始めたとしたら、どう解決したらよいだろうか。逃げられないようにドアを閉めるか、それとも、レコードを変えるか。
どうしたらよいかは明らかだろう・・・

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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