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Inked Pixels / Bigstock



山ほどの現金を溜め込みながら、なかなか株主に利益を還元しようとしない日本の企業。
そこで筆者は、経営努力を続ける企業が報われる仕組みが必要という。その提案とは?


日本の上場企業の株主利回りはここ数年上昇傾向にある。
キャッシュフローの増加と、株主や政府からの圧力があってのことだが、それでもまだ低水準であると言わざるをえない。
図1は、日本とアメリカ、ヨーロッパにおける2014年の株主還元をまとめたものである。

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現在TOPIX500には、1年間の売上額を超えるネットキャッシュ(現預金と短期保有の有価証券の合計額から有利子負債を差し引いたもの)を保有する企業が52社ある。その点、S&P500ではたったの13社だ。

使われることのない現金を山のように保有している企業がたくさんあることが、日本経済によい影響を及ぼしているとは言いがたい。
本来、その資金は投資され、リターンを稼ぎ出すために使われるべきものだ。

必要以上の現金を保有し続ける口実としてよく挙げられるのが、将来的なM&Aに備えているという理由と、業績不振の年に備えているという理由がある。これらを一つひとつ検証してみたい。

大型買収を行える資金力を保有しているのは、よいことではある。企業買収のために現金を溜め込んでいると主張する企業はつまり、現金持ち高を上げ、巨額になったところで単一案件につぎ込んだら、また一から溜め直そうとしていることになる。谷崎潤一郎著『夢の浮橋』に出てくる鹿しし威おどしのようなものだ。

ただ私は、これが経済にとってよいことなのか疑問である。
まず、日本でトップクラスの現金を保有している企業は、ほぼ大型の企業買収を行っていない。谷崎流に考えれば、彼らは水を川に戻していないのだ。

これが、2つ目の「業績不振の年に備えている」という言い訳につながっていく。この理屈は理解できるし、日本のような保守的な国では、共感を得られるだろう。

私はこのような考え方は、企業は家族のようなもので、安定と財務上の安全が、株主還元やROE(株主資本利益率)よりも重要という考え方に根差しているのではないかと思っている。

同族企業であれば、このような姿勢も妥当かもしれない。
しかし、上場企業の幹部が本当にそう考えるのであれば、他の株主からすべての株を買い戻して自社で保有し、非公開の同族企業になればよいのである。 

加えて、上場企業は現金を持ちすぎると、財務上の圧力が減少して現状に満足してしまう傾向がある。
日本は国レベルでも、安定の必要性と変化へ対応することの必要性のバランスをもっとうまくとって、成長につなげていく必要がある。

ヤマホドカネモチ株式会社の場合

そこで、状況を改善するために提案がある。
これは日本のROEを上昇させ、株主還元を増加させ、株価上昇を後押しすることを目的としているもので、最終的にはGDPの上昇にもつながる。

毎年、年度初めにネットキャッシュがゼロを上回る企業に対して、余剰なフリーキャッシュフローの一部について税加算を行うのだ。なお、ネットキャッシュがマイナスの企業には本原則は適用されない。それでは、この税加算の仕組みを解説しよう。

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ヤマホドカネモチ株式会社(YHKMKK)は、税引き後利益100円をあげている。
そのなかから、20円の設備投資を行う(原価償却分も考慮する)。そして10円で他社を買収、25円で株主に配当を行い、5円分自社株を買い戻したとする。これを全部行っても、山ほどの現金にもう40円を加えることになる。

ただ、年頭に200円のネットキャッシュを保有していた場合、それが年度の売上高成長率(%)とROE(%)の平均値まで増加することは許容する。
この条項を設けたのには、企業はやはりワーキングキャピタルとしての手元資金が必要であり、この額も売り上げの増加に伴って増える必要があるからである。しかし、この提案では、売り上げが伸びているにもかかわらずROEが著しく低い会社は不利になる仕組みになっており、これがまさに私の意図するところなのだ。

ケーススタディーに戻ろう。YHKM KKは年頭に200円のネットキャッシュを保有している。そして売り上げが15%増加したにもかかわらずROEは5%に留まったとすると、2つの平均は10%となる。この10%が今年同社に許容されるネットキャッシュの増加率だ。ヤマホドカネモチ株式会社は今年ネットキャッシュが40円増加する。これは20%の増加に相当するため、余剰分となる20円の内部留保される現金に対して15%の割増課税が行われることになる。

割増で払うことになる3円は税率にして3%である。つまり、同社の通常の税率が35%だった場合、割増で支払うことになった3%を加えると38%の税率が課されたのと同じ計算になる。

きっと、カネモチタガリな会社たちは、「大型M&Aに備える柔軟性を損なう」と反発するだろう。
そこで、もう一つ条項を用意した。ある期において、ネットキャッシュがマイナスになった場合(株主還元やその他経費差し引き後)、そのマイナス分の額について、向こう5年間の課税対象となるキャッシュフローから控除して相殺できる、というものだ。これは現行の課税所得計算上の欠損金繰り越し制度に似た仕組みである。

じつは、マイナスのフリーキャッシュフロー繰り越しには、継続的に大量のフリーキャッシュフローを生み出し続けている優良企業に対して、買収を促進する効果もある。買収を行うことで、将来的な節税効果があるのだ。

最後に、YHKM KKが自社の資産を売却してそれを単純に現預金に追加した場合については、追加課税対象とはしない。不要な資産を、それを必要としていて有効活用できる人へと売却することは奨励するべきことである。

YHKM KKは仮想上の事例ではあるが、多くの有名企業に置き換えることができる。この制度が導入された場合、ほとんどの企業は万策を尽くして課税を免れようとするだろうが、それでいいのだ。

なぜなら、国内投資の増加とROEの改善や株主還元の増加は、総GDPを大きく押し上げ、結果として政府の税収が増加することになる。

負債太りの会社も、現金太りの会社も、どちらも健康とは言えない。グローバル経済で熾烈な競争にさらされている今こんにち日、日本は、持っているすべての資産に今まで以上に一生懸命に働いてもらわないと、健康的かつ筋肉質な強い国になることはできないだろう。

デービッド・スノーディ = 文 徳田令子 / アシーマ = 翻訳

 

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