オーガニックはなぜ「邪悪」になったのか

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オーガニック食品業界はここ10年ほど、ブームに沸いてきた。米国内の農家が生産する有機栽培の作物の売上高は2007~12年の間に83%増加。オーガニック製品は高価で、従来の作物や製品より優れているとの主張が正しいことを示す客観的な根拠がほとんどないにもかかわらず、食品からリネン類、枕、衣服、さらにはタバコまで、ほぼ全ての産業が「オーガニック」をうたうために多大な努力を払ってきた。まるで、ある種の狂信的な集団のようだ。日本のことわざ、「鰯の頭も信心から」とはまさにこのことだろう。

だが、そのカルトは現在、存続の危機に脅かされている。そしてメンバーたちは、自らにとっての重大な脅威である遺伝子組み換え食品を攻撃するなどして、必死の抵抗を試みている。

食品問題の活動家の間でも、メディアでも盛んにもてはやされてきた「オーガニック」が、なぜ敵意をあらわにしたり、うそを吹聴したりするのだろうか。簡単に言えば、恐怖にかられているのだ。米国ではカリフォルニア州とワシントン州に続いて昨年、コロラド、オレゴンの両州で遺伝子組み換え表示の義務化に関する住民投票が実施された。提案は否決されたが、オーガニック産業は可決させるために、大金を注ぎ込んだ。

有機農法は、本来それが目指したのとは異なる形で、有害な雑草があっという間に生え広がるように普及した。これを受け、クリントン政権下でオーガニック認証基準の採用が検討された当時、農務長官だったダン・グリックマンは、「オーガニック表示はマーケティングツールだ。食品の安全性を明示するものはなく、“オーガニック”であることは栄養価や品質の価値を判断する基準でもない」と述べた。消費者は今、この点を理解し始めている。

市場調査会社ミンテルが今年行った複数の消費者調査の結果、小売店側がオーガニック製品の取り扱いを急速に拡大している一方で、関連製品の売り上げは頭打ちになっている。さらに、消費者は商品が「オーガニック」であるとの表示に対し、いくらか懐疑的になっている。食品チェーン「ホールフーズ・マーケット」の自社ブランド製品で数種の野菜を袋詰めにした「カリフォルニア・ブレンド」は「オーガニック」をうたっていたものの、中国からの輸入野菜を使っていたことが明らかになった。これも、こうした結果の一因だろう。ミンテルの調査によれば消費者の約半数が、「オーガニック」の表示は価格を釣り上げるための言い訳だと考えている。

また、オーガニック製品を購入する人たちの大多数は、より健康的で栄養価にも優れているとのメーカー側のうたい文句を信用している。しかし、これらの主張が正しいことを示す証拠がほとんどないことに気づけば、商品を買う人は減っていくだろう。さらに、これら製品の購入層の大半を占めるミレニアル世代が成長して子を持ち、支出が増えれば、高くてもオーガニック製品を選ぶべきだと彼らを説得するのは、一層困難になる。

このままでは、オーガニック製品は遺伝子組み替え食品とのより厳しい競争にさらされることになる。
遺伝子組み換え製品は農学的な重要性を高めているだけでなく、消費者にとってもますますフレンドリーになっている。有機栽培には取り入れることができないこの技術やそれを用いた作物や製品がさらに生産効率を上げれば、オーガニック製品は到底、太刀打ちができない。有機栽培は従来の農法で栽培される作物よりも生産性が低く、同じ作付面積でも収穫量は大幅に下回る。その「オーガニック」が従来の農作物や遺伝子組み換え食品と戦うためには、競合相手を中傷し、「ブラックマーケティング」で消費者を欺くしか方法がないのだ。


編集 = 木内涼子

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