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アントレプレナーシップ、特にニッチな市場での成功を目指す起業家たちを取り上げる記事を執筆

Kamira / Shutterstock

10月に米南東部ジョージア州アトランタに本拠地を置く起業家支援組織Oxford Center for Entrepreneursと縁のある40人のアメリカ人一行とキューバへ出かけた時の話である。出発前には、キューバではクレジットカードも携帯電話も使えないとか、ホテルのWi-Fiもつながってもすぐに切れるとか、トイレットペーパーは持参した方がよいとか、様々な警告めいたアドバイスをもらっていた。到着すると、今度は政府が運営するホテルに一行の全40人がチェックインするまで7時間くらいかかる可能性があると言われた。しかし、これらはどれも杞憂に終わった。

飛行機がホセ・マルティ国際空港に着陸する際、眼下に広がっていたのはどこまでも続く未開の土地。そして降り立ったハバナは予想どおり50年前から時が止まっていたかのような街だった。しかし、変化の足音は着実に近づいてきていて、起業家たちは何かビジネスチャンスが見つけられるのではないかと色めき立っていた。

「キューバにマクドナルドは要らない」
空港からその昔フィデル・カストロが支持者に演説を行った革命広場へ向かった。内務省の建物の壁には、建物何階分もの大きさで描かれたハバナの象徴とも言われる革命家チェ・ゲバラ壁画が依然として残り、キューバ独立革命の英雄ホセ・マルティを称えて建てられた高さ約120メートルにして街で一番高い建造物である展望台が立っていた。そして、キューバではどの高いビルもそうだが、このタワーの周りも何十匹もの禿げ鷲がぐるぐると飛んでいた。

キューバ滞在2日目には、ヒューゴ・カンチオの事務所を訪ねた。雑誌ザ・ニューヨーカーの記事や直前にCNNで放送された番組「Parts Unknown(知られざる世界)」の影響で、カンチオは今やキューバでビジネスをしたいアメリカ人が会っておかなければならない人になりつつある人物だ。

キューバ生まれのカンチオは、フィデル・カストロに関する軽率なジョークを飛ばしたために16歳に時に国から逃げることになった過去を持つ。今では、カンチオの会社Fuego Enterprisesは、マイアミとハバナに事務所があり、カンチオ自身は定期的に両方の間を行き来している。

カンチオの会社のハバナ事務所ではWi-Fiも使えたが、これはカンチオの事業がメディア・ビジネスだからだ。Fuego社はアメリカに暮らすキューバ人亡命者に向けたOnCubaという2か国語で出版される雑誌をつくっている他、旅行業や通信業にも進出している。

多くのキューバ人亡命者と異なり、カンチオはアメリカの対キューバ輸出入禁止令は、自分がキューバに残してきた姉妹たちのような無実の人々を苦しめる失政だと信じてきた。アメリカ人起業家たちは、経済制裁が解除されれば、暴君カストロの思う壺だと主張するキューバ人亡命者たちの意見についてどう思うか尋ねた。するとカンチオは「マイアミにいるキューバ人の同胞たちが人権の話を持ち出した時は、キューバは完璧な国ではないけれど、もっとひどい人権問題がある国にだって投資をしても問題がないじゃないか、と言うのです」と答えた。そして中国を例に挙げた。

では、経済制裁の解除とインターネットの普及はキューバをダメにしてしまうのだろうか?「キューバ人はメラコン海岸にマクドナルドやスターバックスが欲しいとは思っていません」とカンチオは答える。「そもそも地元の文化が強すぎてそんなことは実現しません。それに、スペインにもインターネットはあるわけですが、インターネットの時代になった今でもスペイン人は2時間のシエスタをとっていると思いますよ」。

アメリカ企業が今キューバでビジネスをするには、何が必要だろうか?
「キューバでビジネスがしたかったらですか?一つアドバイスをあげましょう。文化をよく知ることです」とカンチオは言った。

「必要なのは、お金と時間、それと頑丈な肝臓」
今回の訪問にはできる限りのことを詰め込んだ。ハバナ市内をバスで移動する途中公園に差し掛かると、エリックがそこでキューバで一番人気のあるアイスクリームを売っていることを教えてくれた。公園内にいくつもの売店があり、どれもアイスクリームを求める人で長蛇の列ができている。「でも、あまりおいしくないんですよね」とエリックが肩をすくめると、80の瞳が起業家魂でキラリと光った。

今年の9月から、アメリカ企業が合法的にキューバに事務所を開くことができるようになった。本当に事業を始めるのかどうかはさておき、ホテルチェーンのマリオットと不動産王のドナルド・トランプがこの地を訪れたのだそうだ。キューバではキューバ人しか不動産を購入することはできない。とはいえ、キューバ人にとっても不動産は一筋縄ではいかない。私たちが聞いた一例では、赤ちゃんが家で生まれた場合、その家に住み続ける権利を有するとする法律があるため、若いカップルはアパートを借りるのに苦労するという話があった。Oxford Centerの設立者クリフ・オクスフォードは「キューバは巨大なベンチャー企業だと思えばいいのです」と言う。「アパートを10万ドルで買えば、10年後には1000万ドルになっているかもしれない、という感覚です」。もちろん、ならないかもしれない。

キューバ滞在2日目には、最近リニューアルされたホテルで、キューバ大学の経済学の教授ユアン・トリアナに会った。ホテルのエレベーターには動画の画面が埋め込まれ、革命以前の時代に観光客がホテルのプールで泳ぐ姿がロマンティックに味付けされた映像が流れていたのだが、これは私がキューバで目にした数少ない商業色のある情報だった。

彼はキューバの過酷な歴史について簡単に話をしてくれた。長期に渡りスペインに支配され、その後アメリカに支配され、次にソ連に支配された。キューバ革命後やってきたソ連は、アメリカの機器では使えないネジを持ってきた。つまり、1959年以降、キューバは既存のインフラをはじめ、50年代のアメリカ産自動車等の修理用部品を手に入れることができなくなってしまったのだ。

ここでも、アメリカ人起業家たちからはたくさんの質問があがった。
トリアナは自分が大学で教えたいことは何でも教えることができるのか?(「できます」)。
経済制裁を解除した場合、革命以前の状況へ逆もどりすると思うか?(「もう時代が違います」)。
今、キューバで投資をするとしたら、どんな投資をする?(「再生可能エネルギーです」)。
今、キューバでアメリカ企業はビジネスをすることができる?(「以前はできませんでしたが、今ならできるかもしれません。合法ではあります」)。
キューバは共産主義と決別するにあたり、中国と同じモデルを踏襲するのか?(「我々は中国人ではないので、中国モデルは踏襲しません。しかし、もう10年から20年は政府が強い力を持ち続けるのではないかと思います」)。

他にも、キューバでビジネスを始めようとするアメリカ人に何かアドバイスはないかと問われると彼はこう答えた。「キューバでビジネスを始めるのには3つのものが必要です。お金と時間、そして強靭な肝臓です」

「瓶に閉じ込められていた自由市場の精は、もう解き放たれた」
外務省でフィデル・カストロの下で働いていた弁護士のビエラに話しを聞いた。彼の話で皆が驚いたのは、フィデル・カストロが革命直後から共産主義を導入したわけではなかった、と主張したことだった。好戦的な態度を崩さないアメリカへの対抗として共産主義化が決断され、各種国有化が進められたというのだ。しかし、それと同時に昨今の変革は本物で、もう後戻りはできないと思う、とも述べた。「国自体が、もうこのままでは無理だと悲鳴をあげたのです。ずっと瓶に閉じ込められていた自由市場の精は、もう解き放たれています」

次にやってくる改革は一部のキューバ人には非常に厳しい状況をもたらすだろう。配給がなくなれば、食料を十分に買えない人も多いだろう。キューバには輸出できる天然資源もない。「でも、キューバにはキューバ人とキューバ文化があるのです」。ビエラの見立てではフィデルの弟ラウル・カストロはあと1年が2年で実権から退く。そして新しい選挙法が成立して、その後に総選挙が行われる。また、ビエラはこれまで政府が経済を支配することを可能してきた現在の複雑な二重通貨制度も早晩解消され、更には交渉が成立してアメリカの経済制裁も解除されると踏んでいる。しかし、キューバがアメリカ政府に対してこれまで損害賠償として3000億ドルを要求していることも付け加えた。

クリフ・オクスフォードがビエラに、キューバ政府は本当に3000億ドルの支払を要求し続けるのか聞いたところ、交渉はするだろうけれど、としながら笑ってこう言った。「我々は共産主義者かもしれませんが、バカではありませんからね」。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

 

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