ビジネス

2015.11.13

「天才の片鱗なし」 師匠が見た、若き日のジョブズ

スティーブは大学中退後、エンジニアとして働いていた時期がある。若き日の天才は、起業家の目にどう映ったのか。(Bloomua / Shutterstock.com)


―「他人の一歩先を行くにはどうしたらいいか」というジョブズの質問に、あなたは、「未来の自分を想像せよ」と答えたそうですね。


ブッシュネル:
そうだ。彼は、将来、コンピュータは「シンプル」であるべきという信念を持っていた。「使いやすさ」が、スティーブのモットーだった。スティーブが偉大な起業家になったのも、この見解が的確だったからだ。

適切なタイミングで的確な考えを示せれば、天才と言われる。結果的に、コンピュータにしろスマートフォンにしろ、スティーブの信念が正解であることがわかったわけだ。


―ジョブズは「自分は常に正しいと信じていた」そうですね。

ブッシュネル:
自分を信じることは、イノベーションのカギだ。イノベーターであることの大変さの一つは、正しいことをしていても周りが信じてくれないことだ。こと先鋭的なイノベーションとなると、民主主義は機能しない。未来を見通せない仲間や同僚のなかにあって、起業家は自分を信じ、人と違うことを良しとしなければならない。スティーブは、いつもそうだった。


―ネクストとピクサーでの失敗を乗り越え、成功できたのはなぜだと思われますか。


ブッシュネル:
はっきり言っておきたいが、ネクストのコンピュータは逸品だった。優れたイノベーションが数多く詰め込まれていた。

ただ、新型コンピュータを売り出すには時期が悪かった。アップルがネクストを買い、ネクストのソフトウェアが次世代基本ソフト(OS)のコードになったことを考えても、ネクストは時代の先を読んでいた。 


―あなたにとって、ジョブズとは。

ブッシュネル:
情熱の人。そして、未来を予見することができる人だ。将棋でも囲碁でもそうだが、先を読む能力は、優秀なゲームプレイヤーに共通する特徴だ。拙著『ぼくがジョブズに教えたこと』の原題は『Finding the Next Steve Jobs(次なるスティーブ・ジョブズを探せ)』だが、そう簡単には見つからない。


ノーラン・ブッシュネル◎「ビデオゲームの父」として世界的に讃えられている起業家・経営者・エンジニア。1972年、ゲーム会社、アタリを設立し、ゲーム産業を牽引。屈指の「連続起業家」としても知られ、近年も脳科学に基づく教育ベンチャー「ブレインラッシュ」を立ち上げるなど活躍中。米西海岸在住。

肥田美佐子 = 文

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