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2022.07.23

新型コロナ、軽症でも脳にダメージ 認知機能低下との関係は認められず

Getty Images

新型コロナウイルス感染症は比較的軽い症状でも脳にダメージを与えうることが、磁気共鳴画像(MRI)を用いた最新の調査研究で明らかになった。軽度から中等度の症例と回復後の脳の構造的変化の間に関連性が認められた。短期的には認知機能の低下との関係は認められなかったものの、感染による脳への長期的な影響についてはさらなる研究が必要だと研究チームは指摘している。

新型コロナでは回復後も、考えることが難しい、集中力が続かないといった「脳の霧」と呼ばれる後遺症に悩まされる人が多い。倦怠感や立ちくらみ、睡眠障害なども含め、新型コロナによる神経症状は数週間から数カ月続く場合もある。

こうした不調は、新型コロナの症状が出なかった人や軽度だった人にも起こることがある。そのため、新型コロナは急性期の症状がそれほど重くない場合も脳に影響を及ぼすのではないかと疑われてきた。

そこで、ドイツのハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのマルビン・ペテルセン教授らの研究チームは、軽度から中等度の新型コロナウイルス感染と脳への影響に相関関係があるかを調べた。

調査対象者はワクチン未接種で2020年3〜12月に感染が確認された223人で、回復から中間値で289日後の脳の状態をMRIで診断した。その結果を、コロナ禍前にMRI検査を受けていた人たちからなる対照群と比較した。223人については、認知機能に問題がないかを調べる検査も行った。

MRIの診断結果を解析したところ、新型コロナから回復した人のグループは、脳の白質の自由水(FW)と平均拡散率(MD)の平均値が対照群よりも有意に高くなっていた。自由水は脳組織の間にある細胞外液で、平均拡散率は脳組織内の水分拡散の程度を表す。

自由水と平均拡散率の値が高いことは、通常、神経が炎症を起こしていることを示し、正常な老化や統合失調症などの障害と関係していることもわかっている。研究チームは、元患者グループでこれらの値が高くなっているのは、神経炎症反応が長引いていることを間接的に示しているのではないかとみている。

脳の深い部分にある白質は情報伝達をつかさどり、損傷すると問題解決や記憶、集中、運動などの機能が損なわれる可能性がある。ただ、今回の研究では、観察された白質の微細構造の変化と認知機能の低下との間に有意な関連性は認められなかった。

研究では、白質の水分のわずかな変化は新型コロナから回復後、1年以内は続く可能性があると結論づけている。また、短期的にはこの変化が認知障害に関係していることは確認できなかったものの、長期的な影響があるのかどうかについては、対象期間を長くした研究がさらに必要になるとしている。

編集=江戸伸禎

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