CONTRIBUTOR

川村 雄介

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1953年、神奈川県生まれ。大和証券入社、シンジケート部長などを経て長崎大学経済学部教授に。現職は大和総研副理事長。クールジャパン機構社外取締役を兼務。政府審議会委員も多数兼任。『最新証券市場』など著書多数。

  • 仮想通貨は人間の何をかえるのか?

    仙人のように齢を重ねた人物であった。とうに300歳を超えていた。身の回りの面倒はすべて、彼が作りだしたロボットたちがみてくれる。筋肉と内臓は定期的な細胞の入れ替えのお蔭で、静穏に過ごせばまだ100年くらいは問題ない。この天才は、ただ一人地球滅亡を逃れ、銀河系の縁に寓居を構えていた。自分好みの伴侶ロボ ...

  • 日本に悲観論を蔓延させる「未来予測本」への違和感

    その男には、森羅万象、日常生活のすべてが心配の種であった。路地を歩けば地面が割れて呑みこまれるのではないか、草原に出ると天空が落ちてきて押しつぶされるのではないか、万事深刻で悲観的な発想しかない。中国周代の杞の国に生きた彼は、後年、誰もが知る熟語の生みの親になった。「杞憂」である。最近の書店で売れ筋 ...

  • 70代からの生き方、現代版「伊能忠敬モデル」

    早雲寺殿二十一箇条は、戦国大名の走り、北条早雲の人生訓、と伝えられている。曰く、「少の隙あらば物の文字のある物を懐中に入れ、常に人目を忍びて見るべし。寝ても覚めても手なざれば文字忘れる事あり。書くことも同じき事」。早雲は壮年期を過ぎてから戦国人としての本格的な活動を始め、齢80にして後北条氏5代にわ ...

  • 日本の「空き家」を狙うのも、やはり中国の人々か

    東京郊外としては敷地が広い屋敷である。知人が最近、リフォームを完了させた建物だ。羨望の目を向ける私に、彼は嘆息で応えた。「いまや、スクラップにお金がかかる。ビルドにはもっとかかる。スクラップアンドビルドになったら大変なんだ」。最近、路線価も上がってきたし、この古屋を売却して都内のマンションに引っ越す ...

  • 「おカネの使い方」を教える米国と教えない日本

    金融のメッカ、ウォール街に、昨年日系米国人がレストランをオープンした。開店以来大入り満員だという。オーナーのリチャードはまだ35歳だが、ニューヨークに4店舗を持ち、どこも順調だ。「パパからこっぴどく叱られたのが、きっかけだったよ」。フットボールで鍛えたたくましい二の腕をさすりながら照れ笑いをする。リ ...

  • 政府のリードか民間の努力か 「真珠の日」が世界に問うこと

    Pearly shells from the ocean shining in the sun ……。毎年夏前になると、商店街がBGMで流し始める「真珠貝の歌」だ。ハワイアンの、いかにも平和な南の島を思い起こさせるメロディである。あるいは6月1日が真珠の日だからだろうか。 ...

  • 「憧れた米国が中国以下の後進国に」 移民が語るトランプ政権への失望

    「パリ協定」から脱退。トランプ大統領が、地球温暖化対策の国際的な枠組みから抜けることを決めた。国連広報センターと吉本興業が組んで、お笑いで「持続可能な開発目標(SDGs)」をPRするほど「世界的な取り組み」と言われてきたが、世界と逆行する動きだ。奇しくも、金融の専門家がForbes JAPANに寄せ ...

  • 愛煙・分煙の知られざる経営学

    ヘビースモーカーの友人が、思わせぶりに上着の内ポケットを弄った。携帯電話とほぼ同じサイズの容器を取り出す。中には短い万年筆ほどのスティックが格納されている。スティックには小さな緑色のランプが点灯している。右端の開口部に白色の短い棒を差し込む。スイッチらしきものを押して数秒待つと、おもむろに棒を咥くわ ...

  • 中国から見るトランプ時代 「我々も歴史には学んでいる」

    春節が明けた広東省広州には、いつもの人混みと車の大渋滞が戻っていた。珠江沿いに整備された公園の空気は、北京に比べると格段に澄んでいる。辺りには19世紀の大砲が数門、役目を終えて海に向けて鎮座する。 私が初めてこの地を訪れた1978年と同じ佇まいだが、周囲の景観は一変した。アヘン戦争やアロー号事件、日 ...

  • EU離脱後の新「日英関係」

    一丁目一番、それも東京のど真ん中の千代田区に、静謐で瀟洒な建物が数棟佇んでいる。一歩中に踏み入ると都心とは思えない異空間だ。ナチュラルに整備された庭園が、訪問者を穏やかに迎えてくれる。英国大使館である。日本と英国との文化交流機関である大和日英基金は、毎年、極めてセレクティブなシンポジウムをここで開催 ...

  • 30年後もノーベル賞大国であるために、禁断の劇薬「国立大学を半数に」

    おくんち祭の熱気が冷めやらぬ長崎の夜だった。諏訪神社にほど近い居酒屋では、常連客たちが臨時ニュースに顔を真っ赤にして興奮していた。「ノーベル賞たい。チョーダイのシモムラ先生がとりなさった。すごかねえ」。チョーダイとは長大(長崎大学)、シモムラ先生とはその年のノーベル化学賞に輝いた、長崎大ゆかりの下村 ...

  • 中国が失った「大国の条件」

    冷え冷えと小雨が落ちる上海の夜半である-。暗闇に紛れて三人の青年が、辺りを憚りながらひび割れた老朽ビルの地下室に参集した。湿っぽく異臭の立ち込める狭い部屋で燈火を付ける。ある青年はポケットからリード線、別の青年は帽子に忍び込ませた部品を取り出す。幼顔を残す一人が上着に隠し持ってきたのは古いスピーカー ...

  • 東京と地方、地域間格差を縮めるために必要なこと

    いづれんみかどんみよんごどだったんだべがにょうごこういっとふったひどだちがいっぱいつげでらったそんながさ……。原典には「いづれの御時にか女御更衣あまた候ひ給ひける中に」とある。源氏物語桐壷の書き出しだ。会津弁で現代訳すると冒頭のようになるという。40年来の友人、長尾修一君 ...

  • 入社試験の是非、ポイントは「試験問題の中身」にあり

    夏休みに入る頃から、地下鉄の車内では一心不乱に受験対策書を読みふける若者たちが目立ち始める。大学3年生である。業界研究の本や問題集でリュックがはち切れんばかりだ。彼の真向かいには黒スーツを着て、化粧直しをしている女子学生が二人。企業のインターンシップに向かうらしい。「センター入試みたいなものですよ」 ...

  • 日本への理解が正確で中立、中国超エリート学生たちの質問

    初夏の天津人民公園は陽がとっぷり暮れた後も暑気が残っていた。辺りでは中高年の女性たちが数十人ずつのグループをつくり、思い思いのダンスで汗を流している。広場で爆裂音を上げるゲームに興じる男たちを遠巻きに見ながら、子どもたちが歓声を上げて走り回る。表通りは高級車が鈴なりの大渋滞だ。公園内の西岸相声劇場は ...

  • 沖縄を「最悪の経済」から救う第三の道[川村雄介の飛耳長目]

    エピジェネティクスという言葉がある。内分泌学でホルモン分泌と遺伝子作用の関係について論じられる専門用語だ。先祖から受け継がれた遺伝子自体は不変でも、生後の環境条件が遺伝子の作用を変えてしまうことだという。4月下旬、すでに夏の暑さが到来した沖縄では恒例の沖縄国際映画祭が開催されていた。いたるところで、 ...

  • 危ない「爆買い」一足打法、打つべき手とは?

    雪がちらつく小寒の夜だった。古い町屋の前でふと、半世紀も前のウィスキーのテレビCMを思い浮かべた。あの画面では一人旅の白人男性が、深更、古民家と思しき宿を訪ねていた。満足に言葉も通じないが、木戸口を潜って視線を合わせた着物姿の女性は、凛として静謐なもてなしの意を表す。そして流れる、ペーソスのなかに温 ...

  • アポロ計画が金融技術を育てた? 技術革新で国家が果たす役割とは[川村雄介の飛耳長目]

    テキサスと言えばジョンソン宇宙センターを思い浮かべるのが私の世代である。1985年の早春、ダラス空港に向けてタクシーを急がせていた。ドライバーはワカメのような長髪に無精ひげの青年だった。一見ヒッピー風だが、語り口は静かで上品な東部英語を話す。「テキサスは長いの?」。私の質問に彼はウィンクした。「NA ...

  • TPPも追い風!? 日本の音楽業界を救うグローバル戦略

    1兆6,000億円余りが日本の音楽ソフトの産業規模だといわれている。小売り換算した場合の推計値だ。CDや音楽配信、テレビ・ラジオの音楽番組、ライブ・コンサート等々が思い浮かぶが、それらのなかで断トツのものがある。カラオケである。市場規模は6,000億円を超えて、音楽ソフト産業の4割近いシェアを占めて ...

  • 人口63万人のシアトルが成長した理由[川村雄介の飛耳長目]

    シアトルは世界でも有数の清澄な美しい都市である。アラスカに通じるオーロラ街道の橋を降りてユニオン湖沿いを数分走ると、ガラスを多用した瀟洒なビルが目に入る。ワシントン大学ロースクール、名称をWilliam GatesHallという。マイクロソフトのビル・ゲイツ氏らが寄贈した高価な建物だ。ゲイツ氏はシア ...