突然ですが、問題です。「結婚式場」は、何をする場所でしょうか?
正解は「結婚式を挙げる場所」です。では「野球場」はいかがでしょうか?
多くの方は「野球をする場所」と答えるでしょう。もちろん正解です。しかし、「東京ドーム」となるとどうでしょうか。東京ドームは、野球以外のスポーツをはじめ、アーティストのコンサート、蘭の展示会など、さまざまなことに利用されています。野球場を広いスペースととらえれば、野球以外のことをやってもよいわけです。
あらためまして、「結婚式場」は、何をする場所でしょうか?
そうです、結婚式場も、結婚式以外のことをやってもいいのです。結婚式場というスペースが、結婚式以外では利用されずに空いてしまっていることに目をつけて、レンタルスペースの予約サイトを始めたのが「スペースマーケット」です。
スペースマーケットは、これまで決まったことにしか使われていなかった空間を、誰でも利用できるようにしました。結婚式場でコンサート。古民家で打ち合わせ。野球場で株主総会。このサービスによって、限られていた空間の使い方がより自由になりました。
普段使われていない空間や乗り物などを共有するZipcar(車のシェア)、Airbnb(宿泊施設のシェア)、Uber(配車サービス)などのサービスが世界的に有名になっています。モノの共有が当たり前になっていくなかで、興味深いアプローチでシェアリングをしている事例があります。
空きスペースに新しい価値を付加したのが、京都の東映太秦(うずまさ)映画村です。
映画村は、観光客向け、家族向けにつくられているため、営業時間は日中のみ。時代劇に使われるような素晴らしい江戸時代の街並み(セット)があるにもかかわらず、夜はほとんど利用されていませんでした。そこに着目して、大人向けのイベントが企画されました。
その名も、「太秦江戸酒場」。タイムスリップしたような街並みの中で、日本酒を嗜みながら、京都伝統工芸の若旦那たちと会話を交わしたり、江戸時代に流行していた夜遊びを楽しむことができる。さすがは、京都の太秦。和服を着た参加者も多かったと聞いています。
京都での事例をもうひとつ。海外から観光にきた「天才」が通り過ぎるのはもったいない。世界的な映画監督、ミュージシャン、学者といった観光客と、2時間ランチを一緒にする「Genius Table」というプロジェクトです。せっかく京都にお越しいただいたんだから、京都市民と友だちにならないのももったいないでしょ、と言わんばかりに学生を中心に運営し、天才の知恵に学んで価値を創出しようというわけです。もったいないの2乗が生んだサービスです。
2012年、ハンガリーでワールドカップまで開かれたフットゴルフ。日本でも協会が誕生。
一方、ヨーロッパでは、あまり使われなくなってしまったゴルフ場を活用するために新しいスポーツが生まれていました。その名は「フットゴルフ」。サッカーとゴルフを足して2で割ったようなスポーツで、サッカーボールを蹴って、グリーンのカップを目指します。
変わったスポーツを発明しただけのようにも聞こえますが、結果は大ヒット。アメリカのゴルフ場では、フットゴルフもできるようになったため、ゴルフ場の利用頻度は上昇。さらには、フットゴルフを始めた人が、本家のゴルフに興味をもってしまい、そのままゴルフを始めてしまったという話もあるようです。
こうした事例には共通していることがあります。それは「Mottainai」ところを見つけだして、よりよく「Kaizen」しているということです。また、「Mottainai」は、これまでの「Mottainai」とは少しニュアンスが違います。それは指している対象が3R(リデュース、リユース、リサイクル)や環境問題に限らないということです。世の中にある空間、時間など、あらゆるモノの中に「Mottainai」が潜んでいる可能性があります。
全国の新聞販売店の「Mottainai」に着目した事例があります。
販売店は、新聞を各家庭に朝夕配達をしているという強い地域ネットワークをもっています。一方、MIKAWAYA21の「まごころサポート」は介護保険がカバーしていない60歳以上のシニアのちょっとした悩み事を解決するお手伝いサービスです。
30分500円のこのサービスを広めるために活用したのが、新聞という根強い「信頼」。同社は新興企業でありながら、新聞販売店を拠点にして、そのネットワークを使うかけ算によって、新しいビジネスを成功させたのです。MIKAWAYA21の次の一手は、ドローンによる弁当などの配達サービス。3年後の実用化に向けて着々と準備を進めています。
日本人の生活に根づいている「Mottainai」。日本企業が実践している、よりよくすることを決してやめない「Kaizen」。日本人のお家芸をふたつかけ合わせて、新しいコンセプトを「Kaizen theMottainai」と名づけてみました。
例えば、新規事業部にて日々アイデアを求められている皆様。一緒に試してみませんか。意外と身近にイノベーションの種は落ちているものです。
イノベーションをゼロから生み出すのはとても大変なことですが、身近な「Mottainai」を見つけだして、よりよく「Kaizen」すれば、世界に誇れる日本発の新しいサービスが生まれるでしょう。「Mottainai」こそ、イノベーションの母なのですから。