日本の農業は世界で十分に勝負できる。
そんな思いを抱き、自分たちのつくったイチゴをたずさえて実際に世界中を飛び回ってきた。そしていま、その思いは確実に実感へと変わっている。
東日本大震災後、故郷宮城県山元町の復興を目的に農業生産法人GRAを立ち上げてから2年目の2013年。伝統的なイチゴづくりの技とIT技術の融合で最先端農業を誕生させ、1粒1,000円の「ミガキイチゴ」を市場に送り出せるまでになった。以降、私たちのイチゴを世界の人々に食べてもらった経験が実感の源となっている。
例えば最近、アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイの金融系企業でブラインドテストをした。欧米人、アラブ人、中華系、インド人など計15国籍という多国籍の参加者25名に、私たちのイチゴ、韓国産、スペイン産、アメリカ産を並べ、試食してもらった。
結果は、食感・甘さで高評価を受けた私たちの日本産のイチゴがナンバーワン。自信はますます深まった。
だが、現状は生易しくない。
日本の農業従事者の平均年齢は66歳。私たちが口にしている国産の食糧は、自分の親の世代によってつくられているといってもいい。近い将来、第一線で活躍している彼らが引退したら、食糧は誰が生産するのか。この状況を変えていかなくてはならない。
そのためには、農業を強い産業として日本に定着させ、若い世代が農業界に就職したいと思える環境を整える必要がある。それを実現させることが私のミッションだと思っている。
G1サミットの「よりよい日本をつくろう」という理念と、「批判よりも提案を」「思想から行動へ」という行動指針に強い共感を覚えている。ここに集まってくる人たちは誰もが前向きな考えをもつ。加えて、スピード感がある。
今日話したことが、翌日にはメンバー間で新規企画としてスタートしていたりする。ビジネスでは、この感覚が大切だ。G1サミットは、私にとって何かを始めるヒントを見つける場所だ。
昨年、産業革新機構、NEC、JA三井リース、そしてGRAの4社が出資し、GRAアグリプラットフォームという会社を立ち上げた。新規就農者や農業に新規参入したい企業向けに、ITも絡めた最新の農業技術を提供する。この事業を通じて、強い農業を日本各地につくり、マーケットを世界に広げていきたい。
農業に対するイメージは大きく変わりつつある。農村地帯に閉じこもって土をひたすらいじるだけではなく、海外マーケットにも積極的に出ていき、ワインのようなプロダクトをつくってもいい。
農業技術のライセンスを外国に売ることも選択肢のひとつだ。そうした農業の新しい顔を見せていこうと考えている。
G1「100の行動」とは
「G1サミット」の代表理事であり、グロービス経営大学院学長の堀義人が発起人となり、「G1政策研究所」のメンバーと議論しながら、日本のビジョンを「100の行動計画」として描くプロジェクト。現在、100の行動のうち、97までが公表されている。