人工知能(AI)はクリエーティブ産業からサイバーセキュリティーに至るまで、あらゆるものに革命を起こししているが、AIを活用したセキュリティー対策に対して最も懐疑的な層は、1997~2006年の間に生まれた「Z世代」だ。
イスラエルのソフトウエア企業フロントエッグが実施した調査によると、Z世代の72%がAI駆動のセキュリティー対策を信用しておらず、他の世代より懐疑的であることが明らかになった。
Z世代がITに囲まれた環境で育ったことを鑑みると、この不信感は一層皮肉なものに思える。この世代は、スマート端末や電子決済、顔認識といった技術を日常生活に当たり前のように取り入れている。ところが、AIがセキュリティーを支配するとなると、尻込みしてしまうようだ。
Z世代がAIに懐疑的な理由
フロントエッグのアビアド・ミズラヒ最高技術責任者(CTO)は、こうした懐疑的な見方は、Z世代が受けたIT教育の結果だと分析している。「Z世代はスマートテクノロジーとともに成長したが、他方でデータ漏えいや監視といった問題も目の当たりにしてきた。こうした環境に継続的にさらされていたことから、プライバシーに関しては特に敏感になったのだ。Z世代は最先端の技術を試すことをいとわないものの、AIがようやく本領を発揮し始めたばかりであることをはっきりと認識しており、AIがプライバシー上の期待に応えられるものかどうかを精査しているところなのだ」
さらに、懸念されるもう1つの理由は、生体認証へのAIの活用だという。高年齢層も顔認識や指紋認証といった生体認証技術を受け入れるようになりつつある中で、調査回答者の半数近く(49%)が、顔認識が自身の追跡のために使われているのではないかという不安を表明した。
ミズラヒCTOも、顔認証が人々を追跡するために使われているのではないかという懸念は「まったく根拠のないものではない」と指摘する。「顔認識技術によって端末の安全な使用やログインができる一方で、この技術は調査や公衆の監視、法執行などにも利用されている。しかも多くの場合、本人の同意なしにデータが使われている」
最先端の技術より信頼を重視
AIによる認証が至る所で導入されているにもかかわらず、回答者の過半数(61%)は、依然として旧来のパスワードによる認証を信頼していた。この傾向はより大きな懸念を浮き彫りにしている。たとえAIベースのセキュリティー対策の方が安全だったとしても、ユーザーはそれを信頼するどころか、その存在すら知らないかもしれないのだ。