経営・戦略

2025.04.07 14:30

米クアルコム、ベトナム最大財閥傘下の「生成AI部門」を買収

Photo by Matthias Balk/picture alliance via Getty Images

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ベトナムで最も裕福な人物で75億ドル(約1兆円)の資産を保有するファム・ニャット・ブオン(56)が率いるVingroup(ビングループ)が、傘下の人工知能(AI)企業の生成AI部門を米国のクアルコムに売却した。

サンディエゴに本社を置く半導体メーカーのクアルコムは4月2日、ベトナム最大のコングロマリットであるビングループ傘下のVinAI(ビンAI)の生成AI部門であるMovianAI(モビアンAI)を非公開の金額で買収したと発表した。

「当社は、VinAIから優秀な人材を迎え入れることで、最先端のAIソリューションを提供する能力を強化する」と、クアルコムのエンジニアリング担当上級副社長ジーレイ・ホウは2日の声明で述べている。

以前はグーグルのDeepMindに勤務していたVinAIの創業者でCEOのブイ・フンは、この取引の一環としてクアルコムに移籍する。彼は、2019年にVinAIを創設した後に生成AIや機械学習、コンピュータビジョン、自然言語処理の取り組みをリードしてきた。

クアルコムは、スマートフォンやコンピュータ、自動車向けに先進的なAIソリューションを開発するため、社内のAIの研究開発能力を強化してきたと述べている。

「私たちは基礎的なAI研究におけるブレークスルーを生み出し、それを業界全体に拡大するというクアルコムの使命に貢献する準備ができている」とフンは述べた。「生成AIと機械学習に関する私たちの専門的な知見は、革新的なソリューションの開発を加速させ、暮らしと仕事の在り方を変えていく」と彼は続けた。

米国のハイテク大手であるクアルコムは、過去20年にわたりベトナムのテクノロジーのエコシステムと連携して革新的なソリューションを生み出してきたという。5G通信やAI、IoT、自動車分野における同社のイノベーションは、ベトナムの情報通信技術産業を支援し、世界レベルに押し上げたとクアルコムは述べている。

ベトナムの首都ハノイに拠点を構えるビングループは、不動産やリゾート開発を中心に、教育事業や農業、ヘルスケア事業や小売業といった多角的な事業を展開している。同社はまた、2023年に特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて上場した電気自動車(EV)メーカー、VinFast(ビンファスト)の親会社としても知られている。

ビングループを率いるファムは、1993年にウクライナでインスタントラーメンの製造と販売を手掛ける食品会社を立ち上げて財を成し、2000年にベトナムに凱旋した。そして、2010年にこの食品会社をネスレに売却し、そこから得た資金をグループの拡大に投資し、さまざまな分野で事業を展開するコングロマリットに成長させた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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