シーズン開幕3試合で15本塁打という球団新記録を打ち立てた米大リーグ(MLB)、ニューヨーク・ヤンキースの快進撃が、思わぬスターによってさらに注目を集めている。そのスターというのは、名門マサチューセッツ工科大学(MIT)出身の物理学者が考案した「トルピード(魚雷)バット」と呼ばれる特殊な形状のバットだ。
従来のバットは、グリップから徐々に太くなり、先端で一定の太さに達する形状だが、トルピードバットはグリップ側に重量を持ってくるために、魚雷のように一度膨らんでから先端に向かって細くなるデザインになっている。この結果、最もボールが当たりやすい部分に「スイートスポット」が位置するようになる。
このバットを開発したのは、MITで物理学の博士号を取得した後にミシガン大学で教授を務め、昨年までヤンキースの主任アナリストだったアーロン・リーンハートだ。「このバットの発想の原点は、ボールに衝撃を与える部分を、できるだけ重く、できるだけ太くしようというものだった」と彼はスポーツメディアThe Athleticに語っている。
ヤンキースはシーズン開幕戦でミルウォーキー・ブルワーズと対戦し、3試合で15本のホームランを放ったが、そのうちの9本が、トルピードバットを使用した4人の選手によるものだった。コディ・ベリンジャー、ジャズ・チザム・ジュニア、ポール・ゴールドシュミット、アンソニー・ボルピー、オースティン・ウェルズといった選手たちがこのバットで本塁打を放っていた。
ただし、このバットを使っているのはヤンキースの選手だけではなく、Yahoo Sportsによれば、先週末には少なくとも6つのチームの選手たちがトルピードバットを使用していたという。一方、ヤンキースの中心選手であるアーロン・ジャッジはこのバットを使っていない。それにもかかわらず、彼はリーグトップの4本塁打11打点を記録した。
ここで気になるのは、果たしてこの奇妙な形状のバットがルール上問題がないか否かだが、その答えは「イエス」だ。MLBリーグ事務局は3月30日に、トルピードバットの形状がリーグの規定に合致していると発表した。MLBの規定では、バットは「一体成型の無垢の木材」で「滑らかで丸い形状で、最も太い部分の直径が2.61インチ(約6.6センチメートル)以内、長さ42インチ(約106.7センチメートル)以内」と定められている。
投手陣は「ひどいバット」と非難
ブルワーズの投手陣は、トルピードバットを用いたヤンキースの猛攻を歓迎していない。リリーフ投手のトレバー・メギルは、ニューヨーク・ポストに対し「ひどいバットだ」「スローピッチ・ソフトボールで使うようなものだ」と語った。さらに、「おそらくフェアじゃないと思う。でもヤンキースだから黙認されるんだろう」と付け加えた。
ヤンキースは世界で最も価値のある野球チームで、フォーブスはその評価額を、82億ドル(約1兆2300億円)と試算している。これは、すべてのMLBチームの中央値の20億5000万ドル(約3000億円)の約4倍の金額だ。