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2025.03.26 09:30

「女子スポーツへの広告費倍増」で男女の年俸格差は縮まるか、米国

GettyImages

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米国では2024年、女子スポーツ向けの広告費が急増し、前年比で2倍以上に膨らんだことが、広告効果データ分析会社EDOの最新報告で明らかになった。最大の広告出稿先は女子バスケットボールだ。これまでにはなかった規模で広告費が女子スポーツ業界に流れ込んでおり、女性アスリートにとっては経済的な改善につながる可能性もある。

2024年に広告主が女子スポーツ向けに投じた広告費は2億4400万ドル(約360億円)で、前年比で139%増加した。広告費の急増とあわせて、女子スポーツ中継の視聴数も急上昇している。例えば、北米女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)のチャンピオンを決めるファイナル第5戦の視聴者数は200万人を超え、WNBAゲームとしては過去25年で最多となった。また、2024年4月に行われた全米大学体育協会(NCAA)主催女子バスケットボール選手権決勝戦の視聴者数は、同男子の決勝戦を初めて上回った。

EDOはさらに、広告の効果測定分析の一環として、広告表示直後の2分~5分以内にとられた(買い物や検索などの)オンライン行動について調査した。その結果、女子スポーツ放送中に表示された広告の方が、ゴールデンタイムの平均的な広告よりも、40%多くオンライン行動を引き起こしていたことがわかった。この広告エンゲージメントからは、女子スポーツへの広告費が今後も増え続けることが示唆される。

広告費増加は、女子選手の報酬増加に直結するか

女子スポーツに流れ込む広告費が増えたことは、ゲームの状況を一変させる。しかし、女性アスリートの報酬増加につながるか否かは、まだわからない。

WNBAは女子スポーツ界で最も成功を収めている団体だが、WNBAとNBA(北米の男子プロバスケットボールリーグ)との報酬格差は依然として、驚くほど大きい。スポーツくじサイト「WSN」によると、NBA選手の平均年俸は1190万ドル(約17億8200万円)だが、WNBA選手は平均でわずか11万9590ドル(約1790万円)だ。

この差は、トップ選手になるといっそう顕著になる。NBA年俸トップのステフィン・カリーは、年間5580万ドル(約83億6000万円)も稼いでいる。一方、WNBA年俸1位のジャッキー・ヤングは25万2450ドル(約3780万円)だ。

大きな格差の要因として以前から言われてきたのは、NBAが非常に大きな収入源をもっていることだ。ただ、WNBAの財務的な課題は、多くの女子プロスポーツに影響を与えている悪循環と連動している。つまり、観客が少なければ大規模なメディア権利契約や広告収入を獲得することは難しいが、それらの契約がなければ、大勢の観客を引きつけて維持することはほぼ不可能、という悪循環だ。

しかし、女子スポーツへの広告費が異例の速さで増加していることは、ようやく潮目が変わったという兆候だ。長年の懸案だった、女子選手の年俸引き上げ実現に向けたきっかけになるかもしれない。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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