地球温暖化による気候変動はこの日本においても、豪雨や山火事など深刻な事態を引き起こしている。企業は防災に加え事業継続性のための対策に本腰を入れているが、個人レベルではじつに無関心という調査結果が示された。他人事では対策にも身が入らず、環境意識の高い国々と市場を競うことも難しくなる。
アジア太平洋地域の支援活動や人材育成を行う一般社団法人Earth Companyは、日本、インドネシア、シンガポールの3カ国の企業で働く713人を対象に、気候変動に関する意識や行動に関する調査を実施した。まず、気候変動問題に対して行動を起こしているかという問いでは、インドネシア、シンガポールとも6割近い人が行動しているのに対して、日本は22パーセント。今もこれからも行動するつもりはないと答えた人は、インドネシアではゼロ、シンガポールでは5パーセント。日本だけ27パーセントと突出した。

調査では、気候変動問題に対する意識として次の4つを提示して、その強さを尋ねている。
影響の実感:日常生活で気候変動の影響を感じているか。
関心:気候変動に関心を持っているか。
自己効力感:気候変動問題に関して自分にもできることがあると思うか。
責任感:気候変動問題に対して何かする必要があると感じるか。
この4つを「感じる」人の割合は、インドネシアとシンガポールにくらべて、日本では「行動」と同様、明らかに少ない。

また、これらの意識を4つとも持たない人の割合は、日本で64パーセントと際立っている。

「影響の実感」については、日本とシンガポールはともに25パーセントと同じながら、関心、自己効力感、責任感においては日本はシンガポールの半分以下であり、それが「行動」で2.7倍の差につながっている。影響をあまり感じていなくても、高い意識を持ち積極的に行動を起こすシンガポールのビジネスパーソンと日本人とは、どこが違うのだろう。

Earth Companyは「日本の企業文化では短期的な利益を重視する傾向が強く、気候変動対策が経営戦略の主要テーマになりにくい」と指摘する。長引く不況でその傾向は強まり、人々は目先のことにしか目が届かなくなっているのかもしれない。「自己効力感」が低いのも今の日本人の特性だ。こども家庭庁の2023年度版『我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査』では、日本の子どもたちの自己肯定感は世界的に非常に低い水準にあり、自分は無力だと感じている若者が多い。
グローバル市場では、投資家や取引先企業が環境対応を重視する流れが強まり、環境基準を満たさない企業は競争力を失う可能性があるとEarth Companyは指摘し、企業は社員の意識改革を促す研修を実施するよう訴えている。