退職代行サービスが何かと話題になっている。ベテラン層の中には「大人なのだから代理人ではなく自分自身で退職申請すべき」という考えを持つ人もいるだろう。しかし『セルフ退職ムリサポ!』『退職代行モームリ』を運営する株式会社アルバトスが行った調査によると、日本の職場環境には依然として深刻な問題が存在しており、ひとりの力では退職が極めて困難な場合もあるようだ。退職代行サービスを利用した人たちのリアルな声をもとに、職場環境について見直すべき点を考えていきたい。
◾️調査概要
調査対象者:『セルフ退職ムリサポ!』と『退職代行モームリ』の利用者131名と26,952名
調査方法:アンケート実施
調査期間:2022年3月15日~2025年1月31日
退職を決意した深刻な理由
退職代行ではなく、自分で退職を確定させるためのサポートサービス『セルフ退職無理サポ!』の調査では、自力で退職を伝えたケースでも、深刻な退職理由を抱えていることが確認された。以下は調査でわかった退職者のリアルな声だ。
・18時間勤務の夜勤明け後にそのまま出勤、8連勤がザラにある(20代女性・介護関連)
・休日や深夜問わず顧客のLINE対応の強制がある、退職希望を出すと個室で何時間も引き止めにあう(30代男性・サービス業)
・正社員で雇用。求人に「試用期間中でも給与・待遇の変動はない」と記載があったのに、実際は期間中の給与が時給950円からだった。犬の糞掃除など聞かされてない業務がある(40代女性・サービス業)
・社長お気に入りの女性と親しくなったことが原因で、社長から嫌がらせを受けている(50代男性・営業)
・飲み会で飲酒&ナンパの強要(20代女性・IT関連)
・休日返上して勤務の強要後、適応障害となった。上司に伝えるとメールの無視&わざとらしい他人行儀の振る舞いをされた(20代女性・不動産業)
・不正行為(横領)の加担を強要させられた。5年近く80時間の残業があったが残業代が1円も支払われなかった(50代男性・製造業)
・終業後、車を上司の自宅に止めておくなどの時間外の雑用を強制される。(20代男性・不動産業)
・後輩の50歳女性社員から「じゃま」「ばか」「みっともない人間」などの暴言を約10年間、毎日浴びせられている(40代性別未回答・製造業)
・社内行事への実質強制参加、全員集合しラジオ体操や当番制でのスピーチ、社訓唱和などがある。上司の質問にすぐ回答できないと「出来ないならやらなくて良い。」と、仕事を取り上げられる(30代男性・飲食業)
・適応障害と鬱を発症し休職を願い出るも拒否された。罰金制度や、5年間辞めてはいけないという誓約書へのサインをさせられた(20代女性・美容関連)
・人手不足を理由に「無給で1日働いてほしい」と言われる。高熱でも出勤を強要される(20代女性・飲食業)
また、自力で退職申請をせず、退職代行サービスに頼った利用者たちのアンケート調査も同様に「物理的な暴力やセクハラ」「社長や上司からの過度なハラスメント」「労働環境の異常(例:会社内で大型犬を放し飼いにし、従業員が怪我をした)」などの理由で退職を決めている。

一方で『セルフ退職ムリサポ!』利用者の約5割が「上司からの退職引き止め」を経験しており、これは退職代行を利用する人(約3割未満)よりも高い割合となった。この結果からは、「退職を何度も引き止められても自力で辞めようとする」強い意志を持つ人が、弁護士などの専門家からのアドバイスを受けることができるセルフ退職支援を求める傾向にあるようだ。
次に、退職代行を利用した人の性別や年代は以下の通りだった。
・セルフ退職ムリサポ!:女性利用者が約6割と多数を占め、40代以上の利用者が約3割。
・退職代行モームリ: 40代以上の利用者は約1割。


SNSを活用したマーケティングの影響で、退職代行サービスは若年層に認知度が高いと考えられる。一方、40代以上では「退職は自分で伝えるべき」という意識が根強く、退職代行よりもセルフ退職支援を選ぶ傾向にあると考えられる。