ここ最近、米国の空港の滑走路上でのニアミスが注目を集めているが、実際のところこうした事故の発生の頻度は以前よりも減少している。
最近では首都ワシントンD.C.近郊のロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港で2月25日、着陸しようとしたアメリカン航空の旅客機が、別の航空機との衝突を避けるための回避行動を強いられたと報じられた。しかし、アメリカン航空はこの見解に異議を唱え、「同機は管制官の指示に従い、別の航空機が離陸する時間を確保するために通常のゴーアラウンド(着陸のやり直し)を実施し、その後、空港に正常に着陸した」と説明した。
一方、連邦航空局(FAA)は、25日にシカゴのミッドウェー空港で発生したニアミスについて調査している。この事故では、サウスウエスト航空の旅客機が、「ビジネスジェットが許可なく滑走路に進入したため、ゴーアラウンドを実施した」と報告されている。
元商業航空のパイロットで航空安全の専門家ジョン・コックスは、「航空業界においては、複数の安全策が導入されており、1つの予防措置が機能しなかった場合でも、別の対策が補完する仕組みになっている」とフォーブスにコメントした。
FAAによると、2024年に米国内で発生した滑走路上のニアミスは、1474件で、1日あたり平均4件だった。この数字は、2023年の1777件(1日平均5件)から17%減少している。こうした事案の大半は、プライベートジェットや企業運航機などの分野で発生しており、商業旅客機の事案はごくわずかだとされている。
FAAのデータベースには、2025年に入ってからのデータがまだ反映されていない。しかし、今年はすでに、25日のレーガン・ナショナル空港やシカゴのミッドウェー空港での事案に加え、航空管制外のエリアで旅客機が地上を移動中に接触した2件の事故や、旅客機が除氷車に衝突した1件の事故が報告されている。
FAAは2023年に「一連の滑走路上のニアミス」が発生したことを受けて、このような事案のリスクを低減するための取り組みに向けて、全米の空港に総額1億2100万ドル(約180億円)以上の助成金を交付した。ここには、誘導路の再設計や新たな照明システムの設置、空港の運用の柔軟性の向上などが含まれていた。
FAA職員の「削減」の影響は?
米国の航空会社は、2009年2月12日にニューヨーク州で発生した事故以来、16年間にわたり致命的な墜落事故を起こしていなかったとコックスは述べている。しかし、今年に入り首都ワシントンD.C.近郊でアメリカン航空のリージョナルジェット機と米陸軍のヘリコプターが空中衝突した事故や、トロントで発生した旅客機が着陸時に横転して上下逆さまになる事故を受けて、このような事故に対するメディアの関心が高まっている。「しかし、これはかなり低い確率で発生する事象が、たまたま連続して発生したというだけのことであり、航空システムの安全性が低下していることを意味するものではない」と、コックスは指摘した。
一方、ここ最近で約400人のFAA職員が、トランプ大統領の連邦政府のスリム化政策の一環として解雇された。しかし、この解雇の対象に航空管制官は含まれていないという。
「私たちは、安全に直結する職種を解雇から保護している」と運輸省の広報担当者のハリー・ドビンズは先週、AP通信に語った。「今回の解雇の対象者は試用期間中の職員であり、4万5000人以上のFAA職員の1%未満に過ぎない」と彼は説明している。