「更年期休暇」という名前の休暇を耳にしたことがあるだろうか。いま、企業や地方自治体でジワリ導入が増えている特別休暇制度だ。
厚生労働省の調査(令和5年「『仕事と生活の調和』の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査」)によると、労働者が健康に関してどのような特別休暇(有給)が欲しいかを尋ねた問いに対し、男性の28.9パーセント、女性の35.4パーセントが「更年期症状の治療や通院の際に取得できる休暇」と回答している。
けれども、同調査で、企業に対し特別休暇の導入状況を調べたところ、「更年期症状のための休暇」を導入している企業はわずかに0.9パーセント。導入予定や導入を検討している企業も1割ほどにとどまっていた。
また、主にコロナ禍明け以降に、さまざまな民間機関でも更年期に関する調査が実施されているが、更年期症状を自覚する人の多さと隠れ我慢の深刻さが浮き彫りになっていた。
更年期障害に関する意識調査と代表的な症状、そして民間保険の対応についてまとめてみた。
「更年期障害」は男性にも発症する
「更年期障害」といえば、女性特有のもののような印象があるかもしれない。女性の更年期は、一般に閉経を挟んだ約10年間、特に40代から50代にかけて心身の不調が表れることを指すことが多い。
だが、近年、男性の更年期障害も深刻であることがわかってきている。加齢やストレスなどが原因で男性ホルモンのテストステロンが急減することで、男性の更年期障害は発症する。中高年男性の倦怠感などの身体症状や抑うつなどの精神症状も、実は更年期障害に起因するケースがある。
近年、役職定年になったり、業務上のストレスで「うつ」になったりする人も少なくないが、「更年期障害」が起因している可能性もある。
厚生労働省が、更年期における健康課題や疾患の予防・健康づくりへの支援の在り方を検討することを目的として実施した調査「更年期症状・障害に関する意識調査」においても、女性だけでなく男性で更年期症状に苦しむ人が少なからずいることが明らかになっている。
その調査のなかで、更年期障害の可能性について尋ねたところ、「医療機関への受診により、更年期障害と診断されたことがある/診断されている」割合は、女性では40歳から49歳で3.6パーセント、50歳から59歳で9.1パーセントであった(図表1)。

その一方で、女性が更年期障害の可能性があると考えている(「医療機関を受診はしたことがないが、更年期障害を疑ったことがある/疑っている」、「 自分では気づかなかったが、周囲から更年期障害ではないか、といわれたことがある」、「別の病気を疑って医療機関を受診したら、更年期障害の可能性を指摘された」の合計)割合は、40歳から49歳で28.3パーセント、50歳から59歳で38.3パーセントと、高い割合を占めた。
また、「医療機関への受診により、更年期障害と診断された/診断されている」割合は、男性の場合、40歳から49歳で1.5パーセント、50歳から59歳で1.7パーセントであった。また、更年期障害の可能性があると考えている割合は40歳から49歳で8.2パーセント、50歳から59歳で14.3パーセントであり、決して低くはないことがわかった。
厚生労働省のホームページ「働き方・休み方改善ポータルサイト」(https://work-holiday.mhlw.go.jp/)内では2024年9月から「更年期休暇」に関する項目が新設されたが、この調査によって、性別を問わず更年期症状を抱える人が仕事との両立に悩んでいる実態も明らかになっている。
男女それぞれの更年期症状や、より深刻な更年期障害がどのようなものなのかの説明のほか、更年期休暇を求める従業員の声や、この休暇を導入した企業の事例も紹介するなど、働き方・休み方改善ポータルサイトポータルサイトでの情報発信はさらに強化されている。