マーケティング

2025.02.20 15:00

マイク・タイソンの大麻ブランドを擁する「IPビジネス企業の稼ぎ方」

マイク・タイソンとアダム・ウィルクス(Gary Gershoff/Getty Images for Royal Queen Seeds)

カナダ出身のウィルクスは、18歳のときにタイヤ販売の仕事を始め、自身で立ち上げたTire Districtという会社を2010年に約100万ドル(約1億5000万円)で売却した。その翌年、カリフォルニアに渡った彼は、フローズンヨーグルトのチェーンを立ち上げた。

そして、ウィルクスは2018年にカナダのプライベートエクイティ企業のセリュヤ・プライベート・エクイティ(SPE)に参加し、大麻業界への投資を開始した。2021年に彼は、「マイク・タイソンが、大麻ブランドを復活させるために話をしたがっている」という話を友人から聞いた。タイソンはその当時、数年前に経営破綻した自身の大麻ブランドを立て直そうとしていた。

ロサンゼルスのレストランでの面談でタイソンは、初対面のウィルクスをビルの屋上に誘って、大麻を吸ったという。そして、その場で話がまとまり、2人はカーマ社を共同創業して、タイソンのブランドの「Tyson 2.0」を立ち上げた。

カーマ社はその後、投資家から総額1500万ドル(約22億6000万円)を調達。さらに、プロレス界のレジェンドであるリック・フレアーのブランドを立ち上げた。

大麻市場は競争が激しく、多くのセレブのブランドは失敗に終わる。米国の各州の合法化が進むにつれて、大麻の価格は急落し、消費者は価格に敏感になっている。実際、著名なラッパーのジェイ・Zが手がけた大麻ブランド「Monogram」は最近事業を縮小し、俳優でコメディアンのセス・ローゲンの大麻ブランドも苦戦中だと調査会社Headsetのデータは示している。

セレブを関与させる事業モデル

ニューヨークを拠点とする運用資産が6億ドル(約904億円)のJWアセットマネジメントの会長で最高投資責任者(CIO)のジェイソン・ワイルドは「大麻業界では、単なるセレブ頼みのブランドかどうかは一瞬で見抜かれる。商品が本当に優れていないと生き残れない」と述べて、同社が通常、セレブの大麻ブランドには投資しないと語る。しかし、ワイルドはカーマ社には投資を決めた。なぜなら、タイソンは伝説的な大麻の愛好家として知られており、そのライフスタイルがブランドと完全に一致しているからだという。

「彼らは、セレブの所有構造をうまく設計している。単にセレブに報酬を支払うのではなく、彼ら自身もブランドの成功に関与させている」と彼は語った。

タイソン自身もブランドの運営に深く関与している。「多くのセレブは、名前を貸すだけで儲けられると思っている。でも、俺の場合はすべての製品を自分でチェックして、基準を満たしているかを確認している」と彼は語った。

カーマ社のウィルクスは現在、ミュージシャンやアスリート、SNSのインフルエンサーを含む6人の有名人と新たな契約の交渉を進めている。彼らは、大麻だけでなく、アパレルや飲料など多岐にわたる商品を販売できるポテンシャルを持っているのだという。

「当社にとって大麻は、主要な製品カテゴリの1つだが、厳しく規制された業界で成功を収めたことで、どんな分野でもビジネスチャンスがあると感じている」とウィルクスは語る。「私はこの会社をIPを収益化する企業に育て上げて、有名人やインフルエンサーがグローバルブランドを築く手助けをしたい。それがどんな製品であろうとも」と彼は語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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