「欧州と中国の市場が苦戦する中で、米国市場は好調だが、すでに誰もが投資している。だからこそシンガポールや日本、オーストラリア、韓国での取引が増えている」とウルブリックは最近のフォーブスアジアのインタビューで語った。
JLLが先月発表したレポートによると、2024年のアジア太平洋地域の商業用不動産投資額は、前年比23%増の1310億ドル(約19兆9000億円)に達し、特にオーストラリア、インド、日本、韓国、シンガポールでの伸びが顕著だった。中でもシンガポールは、多くのビリオネアや富裕層がファミリーオフィスを設立する動きが活発化しており、投資額の伸びはこの地域で最大の前年比60%増となり、115億ドル(約1兆7000億円)以上が投じられていた。
シンガポールで昨年行われた最大級の取引の1つは、8月に米投資大手ウォーバーグ・ピンカスとオーストラリアのレンドリースの合弁会社が、16億シンガポールドル(約1810億円)を投じて、ソイルビルド・グループのオフィスや工業用不動産のポートフォリオを取得した案件だった。
「シンガポールの不動産市場は、予測がしやすい安全な投資環境が整っている。ここ以上に予測可能な市場はそう多くはない」とウルブリックは述べている。彼はまた、日本やオーストラリア、韓国も引き続き世界の投資家にとって魅力的な市場であり続けると予測している。
JLLによると、観光ブームに沸く日本では特にホテル関連の投資が活発化し、2024年の不動産投資額は、前年比48%増の360億ドル(約5兆4700億円)に達していた。米国の投資会社TPGアンジェロ・ゴードンは、10月に「グランドニッコー東京台場」を1060億円で買収する契約を結んだ。「日本の不動産市場は、金利の上昇にもかかわらず、引き続き魅力的だ」とJLLは1月のレポートで述べていた。
データセンター投資も活発化
さらに、オーストラリアやインド、韓国ではデジタルインフラの拡大を背景に産業用不動産の需要が堅調だった。9月に米ブラックストーンは公的年金のカナダ年金制度投資委員会(CPPIB)と共同で、オーストラリアのデータセンター運営大手エアトランクを240億豪ドル(約2兆3200億円)で買収すると発表した。この取引は、世界最大のデータセンターの買収案件とされた。さらに、6月にはシドニーを拠点とするマッコーリー・グループの支援を受けたファンドが韓国で初めてのデータセンターのポートフォリオを取得した。
「データセンターへの期待は高まっている」とウルブリックは語るが、一方で、この分野の成長には限界が見えているとも述べている。「こうした施設への需要は非常に強いが、すべてのデータセンターを稼働させるための電力供給が十分ではない」と彼は指摘した。
(forbes.com 原文)