ところが10年ほど前から、「データ」を施策検討に使う「EBPM(Evidence Based Policy Making/証拠に基づく政策立案)」という考え方を採用する自治体が現れはじめた。
このようななかで、神戸市は、市が保有する膨大なデータを全ての職員が利用できる仕組みを構築した。昨年には税収増という目に見える成果が出てきたことで、全国各地の自治体から注目を集めつつある。
米国企業開発の「タブロー」を採用
ウェブ時代のいま、民間では販促やマーケティング分野で、顧客データの活用が常識になりつつある。それと較べると、行政は持っている情報をそれほど生かせてはいない。ところが、自治体はデータの宝庫だ。なぜなら、住民基本台帳を中心に税金や福祉、教育など全住民のデータを持っている。さらに、国勢調査や経済センサスのような統計情報、住民からの通報や各種手続から得た情報も保持している。
ところが、これらの情報は各部署のシステムごとに管理され、横断的に利用されることは皆無だった。
そこで神戸市は2022年6月に、各システムで管理されていたデータを集約して、グラフや地図の形でパソコン画面に表示し、直感的に理解できる仕組みを導入した。
この画面は「ダッシュボード」と呼ばれ、職員が普段使っているパソコンから操作、閲覧できる。行政データを地図やグラフで可視化するのには、米国企業が開発した「タブロー(Tableau)」を採用している。

このようなデータを使って、神戸市は市内各地における将来の人口予測を行った。実は、将来の人口推計については、「国立社会保障・人口問題研究所(社人研)」が、5年に1回の国勢調査をもとに、市区町村(政令市では行政区)ごとに計算した数値を、全国どこの自治体でも使っている。
ところが、対象となる区域のなかでは人口ピラミッドはバラバラで、マンションが建って子育て層が多いエリアから、高齢化が深刻なエリアまである。さらに5年に一度しか見直せないのも迅速性を欠く。
そこで神戸市は、住民基本台帳をもとに、毎年の出生や死亡、転居などの動きや住宅地の開発計画などを加味して、163ある小学校区という狭いエリアごとに将来人口を推計したのだ。この結果を保育所の配置や斎場の整備計画に使えば、サービス水準を下げることなくコスト削減ができる。