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スタートアップ

2025.01.28 14:30

「言語の壁」がなくなる未来 Kotobaが音声AIで目指すジャイアントキリング

小島熙之(写真左) 笠井淳吾(同右)|Kotoba Technologies

小島熙之(写真左) 笠井淳吾(同右)|Kotoba Technologies

2025年1月24日発売の「Forbes JAPAN3月号」は、「インパクト100」「AI50」「CIOアワード」「SVJP」の4大特集号だ。表紙は、日本最速でユニコーン企業になったSakana AIの3人。そして第1特集では、日本経済を進展させる「新しい主役」になるであろう「インパクト・エコノミー」にフォーカス。「『日本のインパクト・エコノミーの未来』を創る100人」や元ユニリーバCEOのポール・ポルマンの独占インタビューなどを掲載している。第2特集では「JAPAN’S AI 50」と称して、日本発AIスタートアップ50選を公開。第3特集では、「CIO AWARD 2024-25」を発表!。第4特集では日本とシリコンバレーのトップが集う会員制プラットフォーム「SVJP」を紹介している。

第2特集では「日本発AIスタートアップ50選」を初公開!AI分野へ投資しているベンチャーキャピタルからの推薦を経て、革新性、市場性、成長性、チーム力、調達力の5つの基準をもとに編集部で選出した。今、注目すべき企業たちとは。

世界的に発展途上である音声基盤モデルの研究開発に特化。2025年初には第1弾のアプリリリースを計画し、ビッグテック超えに挑む。



2024年11月にエヌビディアが東京都で主催したカンファレンス「AI Summit 」。ここで行われた同社CEOジェンスン・フアンとソフトバンクグループ会長の孫正義の対談は、経済界から大きく注目された。実は、このとき会場で来場者向けに両者の話す英語の日本語へのライブ書き起こしを担ったのは、Kotoba Technologiesが開発した音声翻訳AIだった。「結果的に今回は見送りになりましたが、本当は同時通訳をやろうとしていたんです」と、CEOの小島熙之が振り返る。

独自の音声基盤モデルを手がける同社では、大きく3つの技術を開発している。ひとつは音声からテキストに翻訳するモデル。もうひとつはその逆で、これまでの日本語対応のTTS(Text-to-Speech)を超える流ちょうな文章読み上げを実現する音声生成モデル。そして現在、「全リソースを集中している」のが、人物の声を模倣するだけでなく話者の感情も再現可能な同時通訳技術だ。

「ほぼ遅延のない日本語の同時通訳AIは、海外のビッグテックも手を出せていない領域。スタートアップならではの機動力で、ジャイアントキリングを狙える」

小島とCTOの笠井淳吾は、それぞれ米コーネル大学、ワシントン大学でコンピュータサイエンスの博士号を取得するなど、世界の最前線でAI研究に従事してきた経歴をもつ。米国の大学進学時に知り合ったふたりは、欧米で巻き起こるLLMの開発競争へスパコン「富岳」を使うことで日本も対抗できるのではと考え、22年10月に開発プロジェクト「Fugaku-LLM」を始動させた。

官民学の協働によって成果を得たものの、「グローバルな研究開発ではよりスピーディさが求められる」と考え、Kotoba Technologiesを23年7月に創業。同社には、富岳や「TSUBAME」を用いて開発に取り組んできたスパコンの専門家、AI分野のトップ国際会議でベストペーパー賞を受賞したメンバーなど、一線級の人材が揃っている。

日本発で国際的な研究開発力をもちながら、事業化に向けたロードマップも抜け目ない。「昨年と一昨年は、ほとんどの時間をR&Dに費やしましたが、25年からは自社技術の普及に向けて動いていきます」と笠井は話す。

同時通訳技術はすでに一部のテックカンファレンスや政府関連のイベントで活用が進むほか、25年初めには同技術を搭載したスマホで利用可能なアプリケーションをローンチ予定。さらに将来狙うのは、同時通訳のビッグマーケットだ。日本語と英語のみならず、中国語やベトナム語など、マルチリンガルな通訳を可能にすることで、国を越えた企業の電話対応や観光産業での活用など、世界に広がるユースケースを想定している。

「私たちが技術を開発することで、いかに言語の壁を壊せるか。壁が崩れた瞬間に、社会へどれだけのインパクトを起こせるか。それを見るのが楽しみですね」(小島)


小島熙之◎コーネル大学でコンピュータサイエンスの博士号を取得。AIトップカンファレンス「EMNLP 2022」で最優秀論文賞を受賞。官学民プロジェクト「Fugaku-LLM」の共同創設者。23年7月Kotoba Technologiesを共同創業。

笠井淳吾◎ワシントン大学でコンピュータサイエンスの博士号とIBMの博士号を取得、豊田工業大学シカゴ校(TTIC)の助教授。自然言語処理の国際会 議「NAACL2022」で最優秀論文賞を受賞。23年7月にKotoba Technologies共同創業。

文=加藤智朗 写真=ヤン・ブース

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