経済

2025.01.24 11:45

総務省とメタ、Xなど大手IT企業がデマ誹謗中傷対策。リテラシー向上の活動開始

ネットのフェイクニュースや誹謗中傷対策のため発足した官民連携プロジェクト「デジタルポジティブアクション」の幹部ら

ネットのフェイクニュースや誹謗中傷対策のため発足した官民連携プロジェクト「デジタルポジティブアクション」の幹部ら

インターネットでの中傷や偽・誤情報拡散による被害が拡大している事態を受け、総務省は1月22日、対策のため利用者のICTリテラシー向上に向けた官民連携プロジェクトを始動したと発表した。

「デジタルポジティブアクション」と名付けられた取り組みには、MetaやX、Google、LINEヤフーといったSNS主要プラットフォーマーに加え、NTTドコモやソフトバンク、KDDIなど大手通信キャリアを始め19の企業と団体が参画している。

川崎ひでと総務大臣政務官は、人々の関心や注目の獲得が経済的価値になるアテンションエコノミーのもと、過激なタイトルや憶測によって作成されたコンテンツが拡散している現状を説明。打手となる「ICTリテラシーの向上には、多様な関係者が一丸となり社会的な機運を高めることが非常に重要だ」と述べた。

さらに同プロジェクトの方向性として、利用者が安心安全にサービスを使えるようにSNS事業者らが自主的に「サービス設計上の工夫をすること」や「利用者が信頼性の高い情報にたどり着きやすいような表示上の工夫をすること」などを挙げ、官民の幅広い関係者で推進体制を築いていくとした。
川崎ひでと総務大臣政務官

川崎ひでと総務大臣政務官

具体的な活動としては、定期的な会合を通して関係企業や団体が連携して必要な対策を検討していく他、2月11日のセーファーインターネットデー(※)に合わせて各企業・団体の取り組みをまとめて掲載するWebサイトを開設。セミナー・シンポジウムの開催や啓発教材の作成、メディアを通じて広報活動を展開する予定だ。

会長を務める憲法学者の山本龍彦慶應大学大学院教授は、日本でも昨年5月に情報流通プラットフォーム対処法が成立するなど、「有害情報の一部カテゴリーについては制度的対応が進んできている」と話した。

一方で「表現を削除させるような規制的な政策は、憲法が保障する表現の自由を過度に制約する恐れもある」と指摘。具体的な犠牲者や被害が認められる事案などについては一定の制度的対応の検討が必要との考えを明らかにしたうえで、根本的解決には利用者の意識改革とそのためのリテラシー向上が不可欠だとした。
会長の山本龍彦慶應大学大学院教授

会長の山本龍彦慶應大学大学院教授

1月18日には、兵庫県知事に関わる疑惑を調査してきた元県議会議員がSNSで中傷を受け、その後死亡した。また、警視庁の調べでは昨年1月~11月のSNS型投資詐欺の被害額は790億円を上回った。実業家の前澤友作氏は同氏の名前や肖像が用いられたSNSのなりすまし広告について、アメリカのメタとメタの日本法人に広告の掲載停止と損害賠償を求めている。インターネット上の中傷や偽・誤情報への対策は、緊急の課題だ。今後、同プロジェクトでは新たな参画企業と団体を募っていく。

アテンションエコノミーはSNS事業者らに大きな利益をもたらす。今春には上述の情報流通プラットフォーム対処法が施行される予定だが、法的制度と合わせ、政府がどこまで硬軟織り交ぜて企業に適切な対応を促せるのかが注目される。

※ 世界で毎年インターネット上の安全に関する啓発など様々な取組が行われる日

文=大柏真佑実

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