これは退屈だが儲かる分野である。シンセジアは1月15日、ベンチャーキャピタル(VC)のNEAが主導するラウンドで1億8000万ドル(約280億円)を調達し、評価額が21億ドル(約3260億円)を突破したと発表した。同社のAIソフトウェアは、20以上の言語に対応しており、化学大手のデュポンやプリンターメーカーのゼロックス、スピリット航空などが利用中だ。
「人々は、これまでテキストやスライドで行っていた業務の説明に動画を用いるようになっている。当社のソリューションは、パワーポイントを置き換えるものだ」とシンセジア共同創業者でCEOのヴィクター・リパーベリは述べている。
同社の昨年における収益は7000万ドル(約109億円)を超え、2023年の3130万ドル(約48億8300万円)の2倍以上に増加した。シンセジアは、今回の1億8000万ドル(約281億円)の調達でアトラシアン・ベンチャーズやPSPグロースを新たな投資家に迎えており、今後はアバターをさらにリアルにし、動画の生成をさらに容易にするためのツールに投資する計画だ。
リパーベリによれば、同社の一部の顧客はすでにこのツールをマーケティング動画に使用しており、TikTokクリエイターの一部も利用しているが、このテクノロジーはまだ、広告やコンテンツ制作向けの準備を整えていないという。「現在、大規模なモデルをトレーニング中で、今後3~6カ月以内にこの壁を乗り越えられるだろう」と彼は説明した。
シンセジアは今後、OpenAIが開発した動画生成AIのSora(ソラ)や、Runway(ランウェイ)などの企業と競合する可能性があるが、リパーベリは、「私たちは、『あらゆるものを生成できるツール』としての動画生成AIには興味がない」と述べている。フォーブスの『30 UNDER 30』に選ばれた彼は、「私たちが関心を持つのは、ビジネス向けのコンテンツだ」と語った。
リパーベリは、事業領域を絞り込むことで会社の競争力を維持できると考えており、ハリウッドの映画監督や特殊効果のエキスパートを顧客とするのではなく、むしろ企業の人事チームをターゲットにする計画だ。「同様の戦略をとる企業は、まだ現れていない」と彼は語る。
シンセジアはまた、コンテンツの管理には慎重なアプローチを取っており、動画やスクリプトの監視を強化して、ニュースや政治関連のコンテンツ制作を、企業顧客に限定している。これは、ニューヨーク・タイムズが、同社のアバターが中国のプロパガンダ動画の制作に利用されたと報じたことを受けての措置という。「AIモデルが強力になるほど、コンテンツ管理の重要性も高まる」とリパーベリは語った。
(forbes.com 原文)