TikTokは、プライバシーと国家安全保障への懸念から米国での禁止措置に直面しているが、親会社である中国企業のバイトダンスが、米国企業へのアプリの売却に同意すれば、存続の可能性がある。しかし、バイトダンスは売却の意向を明確にしておらず、禁止措置が実施されれば、このアプリはApp StoreやGoogle Playストアから削除される可能性が高い。
禁止前にアプリをインストールしたユーザーは引き続きTikTokを利用できるが、今後のアップデートを受け取ることはできなくなり、アプリが徐々に劣化する可能性が高い。その結果、多くのTikTokユーザーが小紅書に流れ込み、このアプリは米国App Storeの無料アプリランキングで1位に急浮上した。
2013年にリリースされた小紅書は、初期の頃は写真をメインとしたアプリで、「中国版のインスタグラム」と呼ばれていた。しかし、その後に発生した新型コロナウイルスの流行期間に急成長を果たし、ショート動画やストリーミングに注力するようになったことで、TikTokの代替アプリとして位置づけられた。
そして今、米国にいる多くのTikTokクリエイターたちが小紅書に移行し、「TikTok難民」というハッシュタグを添えて投稿を行っている。彼らがTikTokを離れて小紅書に向かった背景には、米国政府の禁止措置に対する反発が見て取れる。さらに、多くの専門家が、小紅書のアプリ上で米中のユーザー間に友好関係が生まれたことに注目している。
ザッカーバーグへの反感
TikTokの代わりとなる米国製アプリは以前から存在しており、フェイスブックやインスタグラムも短編動画のフィードに注力しているが、これらはTikTokほど、オンライン上の文化的エンジンとしての支配力を築くには至っていない。この背景には、若い進歩的なユーザーたちが、ここ最近におけるメタのコンテンツに対する姿勢や、マーク・ザッカーバーグの言動に反感を抱くようになったことが挙げられる。ザッカーバーグは、トランプ次期大統領の当選後に、外部機関によるファクトチェックを終了させ、LGBTQ+の人々たちに対する差別的な投稿を許容するようになったと報じられた。
それでも、オンラインの勢力地図は依然として流動的で、小紅書の勢いが今後も続くとは限らない。一方、X(旧ツイッター)においては、多くのユーザーが競合のBluesky(ブルースカイ)の利用を開始している。
また、奇妙なことに、トランプがTikTokの救済に乗り出す可能性もある。このアプリで一部から支持を集めるトランプは、以前の批判的なスタンスを撤回し、自身のSNSであるトゥルースソーシャルに、「なぜ私がTikTokを排除したいと思うだろうか?」と投稿した。
TikTokの運命は間もなく決まるが、禁止措置が実施された場合、ウェブの風景は現状よりもさらに分裂したものになりそうだ。小紅書に移行するユーザーもいれば、他の動画プラットフォームに吸収されるユーザーもいるだろう。あるいはこの種のアプリの利用を完全にやめてしまう人も出てきそうだ。
(forbes.com 原文)