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2025.01.19 15:15

スタンフォード大日本人コーチが見た 米国で猛威ふるう「買い物怪獣」たち

Getty Images

4.Amazonチェック

アメリカで何か新しいプロダクトが発売された際、数年前まで、よく聞いた言葉である。その流れは以下である。

・新しい商品をAmazonで注文

・数日間その商品を使ってみる

・なんらかの理由をつけて返品する。もしくは(気に入ったら)そのまま使い続ける

人によっては、この数日間のレヴューを友達に共有したり、動画やブログにしてみたり。とにかく新しい商品を、購入 →チェック →返品という流れが一時期このエリアで流行っていた(ここ数年はさすがに対策がなされているようだが)。

「売る側の返品に対する寛容性と買う側が感じる返品ハードルの低さ」は、日本のそれとは比べ物にならない。

5.Nike Store

今年の1月に、私の消費者としての、日本人としての価値観を揺るがすような看板を見た。

近くのNike Storeでの出来事である。
著者提供
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直訳すると。

・返品のルールを60日までに延ばしました

・なにも心配することなく新しい商品を試してください

・合わなければ、返品してください。その際返品に関する理由は聞きません

・返品の期間は60日が上限です

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そして、昨日行ったモールでは、なんと返品期間が「買った日から120日」というブランドまで。しかもオンラインでの購入も含むという。

消費者側もさることながら、小売側も「そこまでして、まず売る!」という姿勢は、日本人として理解しがたい。

これらのエピソードから、買う側だけでなく売る側や社会のルールや仕組みまでもが、消費を伸ばすためにデザインされているのでは?と思ってしまうほどである。得体の知れぬ、絶対に越えることのできない文化。まさにアメリカ社会全体が消費怪獣であると言えよう。

10年以上も前だろうか、アメリカの政府高官が訪日した際に通訳が「もったいない」という言葉を英語に訳すのに苦労したそうだ。通訳がその要人にピッタリ当てはまるニュアンスの英単語がないため、いろいろな表現を駆使して説明すると、「確かにそれを一言で表す言葉はない。でも、それは今のアメリカ、そして世界に本当に必要な言葉だ」と感心していたそうだ。

この国で働き始めて18年。そう言われてみれば「もったいない」という言葉を、こちらに住んでいる人びとから感じる機会は、ほぼ皆無と言っても過言ではない。カレッジスポーツという特殊な業界で働いているのも手伝って、私は日々この「消費怪獣達」に囲まれながら生活している。職場でよく聞かれる。「TKは、どうして何年も前に支給された服を、きれいに保って着ていられるのか?」

私は、ただ気に入ったものを大事にして着ているだけなのだが、アメリカ人の同僚にはそれが不思議らしい。

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