実はここアメリカにも、倒すことや上回ることが到底できない「怪獣」がいる。「消費怪獣」である。彼らの消費能力、簡単に言えば「物を買う能力」は、我々日本人とは比較にならない。「凄まじい」と表現しても過言ではない。
消費に関して、アメリカの消費怪獣達について、幾つかのエピソードをシェアしたい。
1.空港での話
以下はまだコロナ全盛期、空港で入国の際に必要だった「PCRテスト」の長蛇の列に並んでいる際に知り合ったアメリカ人女性Aさん(10年以上日本在住)との会話である。いろいろな会話があった後に——。Aさん:「コロナの給付金(アメリカで)もう振り込まれた?」
TK(筆者のニックネーム):「うん、数日前に。しかしアメリカは早い!」
Aさん:「もう長い間(日本に)住んでるからわかるけど、日本の政府や行政に、それは求めないわ」
TK:「周りの友人もそうだけど、アメリカ人は振り込まれたら、すぐ使うよねー笑」
Aさん「違う。アメリカ人はその制度が決まった瞬間に使うんだよ。笑」
2.ZOOMでの話
これもコロナ時代の話。月に数回、知り合いの会社経営者とシリコンバレーのスタートアップや実業家をつないてZOOMミーティングを開催していた。Rさんはお世話になっている女性実業家、アメリカ育ち、ハーフでありトライリンガルであり、今や泣く子も黙る企業の執行役員。そのZOOMミーティングで、年末商戦の話題になったときの会話が以下である。
TK:「こちらの年末商戦は11月の後半から始まるし、クリスマスも含め、まさに売れ行きは桁違いですよね。アメリカ人はとかく後先を考えないで行動するから、まず買ってしまう」
Rさん「TK、それは違う。アメリカ人はアホでも先のことを考えてないわけでもなく、【optimistic (楽観的)】なんだ。似ているようで、その言葉には大きな違いがある」
たしかに、「なんとかなる、買ってしまえ」という、かならずしも根拠はないが前向きな消費動機は、なんといってもアメリカ人ならでは、と思える。
3.返品率17%!
カリフォルニアに新店舗を出すために転勤してきた有名小売チェーンの社員。新しい店舗を出す約1年間の準備の間、彼からいろいろな情報を共有してもらった。一番驚いたのは、アメリカの(ECを除く)小売業の返品率。店舗の家賃や光熱費、人件費、顧客単価、いろいろと仮定する数字の中で、返品率の仮定は実に17%。日本のそれが3〜5%と言われているのを考えると、信じられないような数字である。客側は「とにかく先に買う!」売る側は 「(返品)リスクは高くても、まず売る!」という姿勢が見て取れる。