最近の日本酒をめぐるニュースに注目してみると、氷温熟成させた古酒や、精米歩合1%未満まで磨きぬいた酒米で醸す酒に数十万円という価格がつけられるなど、その高価格化が目につく。海外への輸出量も順調に推移しているようだし、日本酒の未来は明るいのかと思いきや……消費量は1973年をピークに変わらず右肩下がりのまま。製造元においては、ここ20年で毎月平均2.4社が廃業し続けるなど、楽観視できない状況が続いている。
そんな日本酒産業にあって、量から質への転換を志し、既存の酒蔵と協業して新しい日本酒をつくることで業界のサステナブルな成長を目指そうと誕生したのが日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」。そのフラッグシップである「百光」は2024年醸造の約1万本の抽選販売に対しておよそ7万人の応募があるなど、富裕層を中心に好評を博している。
「飲んでみたいとおっしゃるお客さまは多いのですが、価格(小売り価格3万8500円)の面から、ちょっと気軽にはおすすめしづらい。その点でも今年秋にリリースされた『弐光』の誕生は喜ばしいですね」と語るのは「鮨 門わき」(東京・銀座)の大将、門脇賢寿だ。
「『弐光』は日本酒でありながら非常に華やかな香りでフルーティ。甘やかな果実感とほどよい酸味で、コースの前半にお出しする酒肴の風味をよりふくらませてくれるため、バイ・ザ・グラスでもお出ししています。和食のみならず、食中酒としての大きなポテンシャルを感じますね」
この「弐光」の果実感とフレッシュな味わいは、その仕込みに由来している。通常の日本酒が米・麹・水を3回に分けて投入する“三段仕込み”によって醸造されるところ、「弐光」はそこからもう一度仕込みを行う“四段仕込み”でつくられており、さらにその4回目の仕込みには「百光」の製造過程で出る米ぬかを甘酒のように仕立てた甘酸っぱいエキスと白麹を加えるというユニークな製法だ。
「米のピュアな味わいを追求するため、日本酒の生産プロセスでどうしても出てしまう米ぬかがアップサイクルされている点も、フードロスの観点から好ましいですね。お客さまへ日本酒の成り立ちを説明する会話のきっかけにもなっています」
高価格化が進み、従来のものと価格の乖離が進む日本酒界にあって、「弐光」はその両者をつなぐブリッジとして、日本酒の未来を明るく照らしてくれている。
弐光|NIKO
容量|720ml
製造者|白瀧酒造(新潟県)
度数|13.4%
価格|9900円
問い合わせ|SAKE HUNDRED (https://jp.sake100.com/)
今宵の一杯はここで
鮨 門わき
鮨を五感で味わう愉悦門脇賢寿大将は北海道から九州まで全国の漁師や仲卸を自ら訪問し、独自の仕入れルートを確立。インディペンデント系闘う魚屋として知られるジョ兄(ジョニー)による神経締めや血抜き、冷やし込みなどを経た鮮魚を、適切なうまみの出る時期を見計って食材を寝かせる江戸前の仕込み技法で鮨へと昇華する。六角形をイメージした美しいカウンターで大将の手技に酔いしれたい。
鮨 門わき
住所/東京都中央区銀座7-4-6
ACN銀座7ビルディング6F
予約・問い合わせ/050-5385-4750
営業時間/17:00 - 22:00(LO21:30)
休/日・祝日