キャリア・教育

2025.01.15 15:15

新卒獲得の虚と実、経営陣への報告が依然「出身大学別採用数」なのはなぜか

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企業の新卒採用は、この数十年あまり変わっていません。どこも経営陣への報告は出身大学別の採用数。マクロの環境も一変しているのに、このままでよいわけがない。

「出身校バイアス」が依然存在するのは、採用した人材が失敗を犯した、あるいは思ったほど成長しなかった場合、人事部が経営陣に「東大卒だったから」と説明できるため、つまり将来へのつっかえ棒(言い訳・保険)として使えるから、という企業もあるようです。

しかし、例えば、また、別理由の「偏向」としては、たとえばスタートアップへの投資でも社長の出身校に左右される会社があるとか。イノベーションの現場でもこんな調子であり、日本のビジネスマンに刷り込まれたバイアスはなかなか変わらないでしょう。逆に言えば、独自性を打ち出した採用は戦略の一助となるでしょう。

採用戦略を考えるには、まず目的・ビジョンから始めたい。採用部門の業績評価といった近視眼的で矮小な目的では、採用という長期的な成果は得られません。ビジョンその1は社の発展した姿、その2は人才の成長した姿、と言えましょう。人才:筆者が社外取締役を務める構造計画研究所ホールディングスが、情報社会から知識社会への移行に伴い、企業にとっての人の位置づけが、経営のリソースとして扱う“人材”から“人財”へ、更には、個人のタレントに着目する“人才”へと変化していると考えることから、この言葉を使います。


好循環と差別化の採用戦略

社を長期的に発展させる人才とは? 出身校でこれは決まりません。もちろん各社各様ですが、基本的には、生命エネルギーの高さ、組織を高める力、企業文化へのフィット、だと思います。

また、賃金・給与を払って使うというのは産業革命時からの古いリソース的な発想です。会社は社会から人をお預かりして力を発揮する場を提供します。そして一人ひとりの人生をサポートします。人才の成長、幸せを実現できれば、社の繁栄につながります。そういう人才が増えれば、社のインナー、そしてアウターのブランディングが向上し、よい人才が惹きつけられるという好循環が生まれます。

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採用の論点は、二つあります。まず、こうした人才を選ぶ、そして、こうした人才が入社する気を高める、ことです。かつては、企業が人を選ぶだけでしたが、いまや自社を選んでもらう努力・工夫が不可欠です。

出身校別採用から進化することにより多様性を拡充することが、これからの経営戦略で重要となります。そして、出身校別の数だけでなく、性別の数などを枠として考えることをやめたいものです。評価の通りだと女性比率が上がりすぎる、という声をよく聞きます。優秀なら女性が多くてもよいのでは? 女性に活躍してもらえる環境を整えれば、他社との差別化にもなるでしょう。男性だけのチームより女性を含むチームの方がパフォーマンスが高いという研究結果もあります。外国人についても同様です。例えば、筆者の古巣のボストンコンサルティンググループでは、外国人の採用のねらいの一つは、日本人の新卒に活を入れることと聞いたことがあります。組み合わせで活性化するわけです。
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文=本荘修二 編集=石井節子

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