井口氏によると、場所によっては大勢の技術者がすべての管内を歩いて検査している場所もあるという。加えて線路内には毎日電車が走っているので、1日の間に検査のため割ける時間は限られる。こうした箇所においても、TRANCITYは有効に機能する。
人間が踏み込めない危険な場所の画像取得に活路
現地映像取得サービスでは、主にLiberawareが製品化した「IBIS2」という狭小空間点検ドローンが活躍する。通常は人が入り込めないような狭く危険な空間をドローンが動き回る、その撮影した動画データから3Dデータが生成されることとなる。同社の現地映像取得サービスは、鉄道施設の保守点検に留まらず、その他さまざまなインフラ設備や建造物の点検、あるいは災害発生地域の現況確認などに活用されてきた。狭小空間点検ドローンで撮影した映像でも、実寸大の3Dデータに変換できることから、保守点検の後段にある補修の工程にも進みやすい。
現地確認の「無人化」にチャレンジするプロジェクトが始動
TRANCITY導入後も、記録し続けるためにはカメラを携えて現場で動画を撮影するスタッフが必要となる。最終的には、そこをドローンやロボットを使って「無人化」するところにまで踏み込みたいと高見澤氏は意気込みを語る。だが現在は国内でドローンを飛ばせる条件が航空法によって定められている。そのため、井口氏は鉄道施設の保守点検作業を円滑化する目的でドローンを効率よく活用する仕組みづくりを、現在も関連各所と連携しながら力を入れて取り組んでいる。
その一例が、2024年に国土交通省「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金事業)」の「鉄道施設の維持管理の効率化・省力化に資する技術開発・実証」に採択され、日本全国に広がる鉄道施設をドローンで点検調査する「Project SPARROW」という事業だ。