こう考えているのは筆者だけではない。実際、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が10月にまったく同じことを口にしている。国際金融協会(IIF)の年次総会で、ダイモンは「第三次世界大戦はもう始まっている。すでに複数の国々で同時多発的に地上戦が繰り広げられている」と述べ、「リスクは極めて高い」と警告した。
シリアでロシアに支援されていた政権が敗北を喫したことは、ダイモンの主張を裏づけている。2015年にロシア軍がシリア内戦に直接介入しなかったならば、アサドは2011年に始まった民衆蜂起によってとっくに追放されていただろう。介入以来、ロシアはイランとその代理勢力であるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとともに、支援がなければ維持不可能な独裁政権をなんとか支え続け、その過程で何千人もの民間人を殺害し、数百万人の避難民を生み出してきた。
しかし、それももはや継続できなくなった。
ウクライナでの戦争はロシアの国力を消耗させ、アサド政権の防衛を担い続ける力を削いだ。これは、第二次世界大戦中に旧ソ連が防衛に成功したスターリングラード攻防戦がドイツ軍の戦力を疲弊させて、1943年の北アフリカ戦線における敗北の一因となったのとまさに同じである。一方のイランは、イスラエルによる直接攻撃とヒズボラへの攻撃を受け、シリアでの戦いに踏みとどまることが難しくなった。
私たちが目の当たりにしつつあるのは、ロシアとウクライナの戦争や、イスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスとの戦いといった、一見無関係な紛争が相互に関連しているという1945年以来見られなかった事態だ。この傾向は今後も続き、拡大し、より多くの国や地域を巻き込んでいく可能性が高い。