中国政府は最近、景気浮揚のための財政措置を発表したが、その効果は今のところ限定的だ。このため、中国は米国との交渉で強く出られないかもしれないとの見方もある。
だがいくつかの動きから、中国政府が米国に対して報復措置を取らず、貿易で打撃を受けるがまま、という可能性は低そうだ。
英紙フィナンシャル・タイムズによると、中国はトランプの1期目以降、他国の措置に対抗できる広範にわたる法律を制定している。その中には、外国企業をブラックリストに載せる、独自の制裁を科す、米国が重要なサプライチェーンにアクセスできないようにする、といった内容のものも含まれている。
輸出管理法に基づく輸出規制対象の拡大は、レアアースやリチウムなど現代のテクノロジーに不可欠な資源を支配している立場を利用して、中国政府がこれらの資源への他国のアクセスを制限できることを意味する。米政府はこのほど米国の先端技術への中国のアクセスを制限したが、その翌日に中国は一部の希少鉱物の米国への輸出を禁止すると発表した。
こうした動きは貿易戦争がさらに激化する可能性をさらに高めている。例えば、米下院の中国特別委員会の委員長ジョン・モーレナール(共和、ミシガン州選出)は先月、中国がWTOに加盟した際に与えられた最恵国待遇(現在は恒久正常貿易関係=PNTRと呼ばれる)を撤回する法案を提出した。
米シンクタンクのピーターソン国際経済研究所は最近発表した研究で、中国のPNTRのステータスを取り消すと米国のインフレ率が上昇し、短期的に米国の国内総生産(GDP)がベースラインを下回り、そこから経済が完全に回復することはないとの見方を示した。そして「株価は下落し、農業や耐久消費財製造、鉱業の企業の下落幅が最も大きいだろう」と結論づけている。
こうしたことから、米中貿易戦争は今後、トランプの1期目のときより米中双方に弊害をもたらすものになる可能性がある。そうなれば、かつてなく破壊的な世界2大経済大国間の貿易戦争の勝者はいないと投資家が認識し、世界市場は不安定になる可能性がある。
(forbes.com 原文)