急成長する「AIコーディング」
Cognitionのアプローチは、他の大手が用いる手法とは異なるものだ。たとえば、2018年にマイクロソフトが75億ドル(約1兆1300億円)で買収したGitHub(ギットハブ)や、評価額が13億ドル(約1970億円)のCodeium(コーディウム)は、人間がコードを書くのを助けるAIアシスタントを提供している。一方、Devinは自律型のAIエージェントであり、理論上は人間の介入なしにAIがコードを書き上げて完成させることができる。Cognitionの共同創業者でCEOのウーは、「私たちは、この進化に大きな機会を見出している」と語る。AIが生成したコードはすでに業界の在り方を変えつつある。グーグルのスンダー・ピチャイCEOは10月に、同社の新しいコードの4分の1以上がすでにAIによって書かれていると述べていた。2024年の年間収益が20億ドルに到達する見通しのGitHubでは、コードの補完ツールが今年の収益成長の40%を占めているとマイクロソフトのサティア・ナデラCEOは7月に発表している。
Pitchbookのアナリスト、ブレンダン・バークによると、生成AIカテゴリーの中で、最も資金調達額が多い分野がAIコーディングであり、今年の上半期だけで10億ドル(約1500億円)以上がこの分野のスタートアップに注がれていた。
この分野に参入しているのはCognitionだけではない。Anthropic(アンソロピック)やアマゾン、IBMといった大手も自社のコーディングツールを発表しており、評価額が30億ドル(約4500億円)のPoolside(プールサイド)や4億ドル(約600億円)のAnysphere(エニイスフィア)といったスタートアップもこの分野に参入している。
IDCのアナリスト、リツ・ジョーティはCognitionのような完全自律型のコーディングAIツールには、業界を一変させる可能性があると述べている。
この状況は、年収の中央値が13万ドル(約1900万円)とされる米国人のプログラマーや、それよりも収入が少ないインドや中国の1300万人の同業者にとって、必ずしも朗報とはいえないが、投資家たちはこの分野に熱狂している。