欧州

2024.12.02 16:00

ウクライナがクリミアにミサイルやドローンの大規模攻撃 いま「南」を攻撃する深謀

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ウクライナは11月27日、縦深打撃用のミサイルやドローン(無人機)多数を駆使して、占領下のクリミア半島にあるロシア軍拠点に対して大規模で連携した攻撃を行った。エストニアのアナリストであるWarTranslatedは「破片が目標に命中し、ロシアのチャンネルはパニックに陥っている」と伝えている
その規模と洗練さにかかわらず、この攻撃は基本的に陽動のようだ。ウクライナ側はこうした攻撃によって、ロシアが1300km近くにおよぶ戦線のほかの方面から、防空システムをさらにクリミアに移すように仕向けたい考えなのだろう。

そうできれば、移動によって防空システムが手薄になった方面に対して、ウクライナ側は空からの攻撃が容易になる。

たとえば、ロシア西部クルスク州方面のロシア軍の指揮所や補給線を狙った攻撃だ。クルスク州では650平方kmほどの突出部を保持している2万人規模のウクライナ軍部隊に対して、総勢6万人にのぼるロシア・北朝鮮連合軍部隊が反撃に出ている。あるいは、ロシアが1年ほど前に始めた強力な攻勢で目下の中心地になっている、ウクライナ東部ドネツク州のロシア軍インフラもたたきやすくなる。

27日の攻撃のために、ウクライナ軍やウクライナ国防省情報総局(HUR)は、ロシアが拡大して2年9カ月あまりたつ戦争でも最も多様な弾薬の組み合わせのひとつを準備した。

米首都ワシントンにあるシンクタンクの戦争研究所(ISW)が伝えているところでは、ウクライナ国産のネプトゥーン(ネプチューン)巡航ミサイル、対地攻撃用に改造されたS-200防空ミサイル、英国製のストームシャドー巡航ミサイル、攻撃ドローン40機などが使われたらしい。ネプトゥーンは海軍、S-200と、Su-24爆撃機から発射されるストームシャドーは空軍、ドローンはHURの兵器だ。さらに、未特定だが陸軍の弾道ミサイルも使われた可能性がある。

高高度を高速で飛ぶ兵器もあれば低高度を低速で飛ぶ兵器もあり、ロシア側による迎撃は複雑になったに違いない。ISWは「ウクライナ軍は西側から供与された兵器を引き続き利用して、ロシア側の後方深くの軍事目標に対してさらに複雑な攻撃」を行っていると説明している。

ロシア国防省は、防空システムでドローン25機を撃墜したと主張した。もしそうだとすれば、ほかのドローン十数機やミサイルは通過したということになる。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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