ビジネス

2024.11.17 11:30

ユマ・サーマンからメルケルまで「人脈・嗅覚」で稼ぐ天才投資家

ビットコインにもかかわっている。現在も約1000BTCを保有しており、現在の金額にすると5800万ドルほどになる。彼は、いずれ1BTCが100万ドルになると確信し、ビットコインを「まさにデジタル・ゴールドだ」と言う。

アンガーマイヤーは、人はいずれ100歳まで生きるのが普通になると考えており、2つの不老長寿企業を共同で立ち上げている。チューリッヒに本社を置くRejuveron(リジュベロン)とニューヨークのCambrian Bio(カンブリアン・バイオ)で、FDA承認済みの抗老化医薬品を開発中だ。「幸せと長寿を売ることは、私にとっていちばん自然ななりゆきです。『幸せになりたくない』などという人はいないし、『健康でありたくない』という人もいませんからね」 (アンガーマイヤー)
 
アンガーマイヤーのポートフォリオは玉石混交の様相を呈している。米ユタ州に本社を置くブレイン・コンピュータ技術のBlackrock Neurotech(ブラックロック・ニューロテック)や、AIテクノロジーで新薬を開発するカナダのAbCellera (アブセレラ)など特定の投資は5倍の利回りを実現した。暗号資産のBlock.Oneは、投資家に7000万ドルの利益を上げ、中小のバイオテック銘柄に特化した彼のヘッジファンドJiva Peak(ジバピーク)の23年11月の創業から24年春までの利回りは59%だった。

ただし、彼が率いるいくつかの上場企業は大きな損失を出している。ATAIは21年6月の上場時に一株20ドル近くをつけたが、現在はナスダックの上場維持に必要な最低水準である1ドルをわずかに上回るレンジで推移している。

「事業はすばらしく順調なのに、株価が90%下落している企業など50社だって挙げることができます。私は何も間違っていません」(アンガーマイヤー)

アンガーマイヤーの思考はさらに、仮想の投資アイデアへと広がる。世界の上位20人の人気セレブで構成される指数を売買できたら、というのだ。彼の投資命題の根底にあるのは、制度への信頼が揺らぎつつあるなか、人々は富や名声によりどころを求めるようになっているという考えだ。彼は言う。

「米国政府とテイラー・スウィフトのどちらをより信頼するかと言われれば、90%の人がテイラー・スウィフトだと答えるでしょう」

前述のセレブリティ指数はまだ存在しないかもしれないが、アンガーマイヤーはふと、間もなく新しいビジネスを立ち上げるところだと漏らした。それも友人のユマ・サーマンと一緒に。


クリスティアン・アンガーマイヤー◎アペイロン・インベストメント・グループの創業者兼最高経営責任者(CEO)。1978年、ドイツ生まれ。幼少時からビジネスに興味をもっていた。98年に入学したベイルース大学で出会った教授らとRNA研究の会社を設立。2003年には他社と合併・上場を果たし、25歳で億万長者に。36歳でアペイロン・インベストメント・グループを単独で創業。

アペイロン・インベストメント・グループ◎アンガーマイヤーが創業したファミリーオフィス兼プライベート投資会社。運用資産約25億ドル。ステロイドなどの薬物使用を認めたスポーツ大会エンハンスト・ゲームズに約250万ドルを投資、第1回大会は2025年に開かれる予定。そのほかにも、暗号資産や幻覚剤、恐竜の化石、脳インプラントなどさまざまな分野に投資している。

文=ウィル・ヤコウィッツ、ブランドン・コチコディン 翻訳=フォーブス ジャパン編集部 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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