ビジネス

2024.11.17 11:30

ユマ・サーマンからメルケルまで「人脈・嗅覚」で稼ぐ天才投資家

ハリウッド俳優のユマ・サーマン(左)など、広い交友関係をもつ起業家のクリスティアン・ アンガーマイヤー(右)(Kristina Bumphrey / Variety / Getty Images)

起業家としての彼の経歴はまるでドイツ版のおとぎ話のようだ。1998年にベイルース大学に入学した彼は、RNA干渉という遺伝子ターゲティングの新テクノロジーを研究していた2人の教授と出会い、その後、共同でリボファルマAGという会社を立ち上げた。2003年、リボファルマは米マサチューセッツ州に本社を置くAlnylam(アルニラム)と合併し、株式公開を果たした。アンガーマイヤーは弱冠25歳にして億万長者となったのである。
 
彼はまた、20代で後に大きな利益をもたらすことになる人脈を手に入れた。ドイツ有数の富裕な一族の出身であるゴロ・クワントと親しくなったのだ。クワントは、リボファルマの後にアンガーマイヤーが大学時代の友人2人と金融サービス会社を立ち上げた際、推定4000万ドルの資金を投入してくれた。
-->
advertisement

07年、アンガーマイヤーはドイツ外務省勤務だった友人から、ルワンダのポール・カガメ大統領のために夕食会を主催しないかと打診された。カガメと意気投合したアンガーマイヤーは、夕食会から数週間後にルワンダの首都キガリに招かれた。ルワンダへの投資を申し出たアンガーマイヤーにカガメは、ルワンダ開発銀行という小さな銀行が身売り先を探していると伝えた。

「帰国後すぐに1000万ドルで買収しました」(アンガーマイヤー)

次に彼はフランクフルトで銀行グループ、アフリカ開発公社(ADC)を立ち上げ、最高経営責任者(CEO)を雇って、 アフリカ大陸で10以上の地方銀行を連続して買収させた。そして14年、アンガーマイヤーとパートナーたちはADCとほかの銀行グループを2億6500万ドル以上で売却した。アンガーマイヤーのもち分は当時15%だったという。
 
36歳でADCを売却したアンガーマイヤーは、新たに投資企業アペリオンを単独で立ち上げ、自らの思うままの人生を歩むことに集中するようになった。「心の底から本当に興味をそそられることだけをしたいのです」(アンガーマイヤー)
advertisement

アルコールは一切口にしないアンガーマイヤーだが、14年にカリブ海での休暇中、友人から勧められてマジック・マッシュルームを食べてみた。カリブ海から帰った彼は、ニューヨークのノボグラッツを訪ね、マジック・マッシュルームは調合薬として大ヒットする可能性があると話した。3日後、まったくの偶然だが、ジョージ・ゴールドスミスという人物がノボグラッツのオフィスを訪ね、シロシビンを使った抗うつ薬開発というビジネスをもちかけた。こうしてノボグラッツ、ティール、アンガーマイヤーの3人は、ロンドンに本社を置くコンパスにそれぞれ100万ドルを投資することになった。

18年、アンガーマイヤーは自らサイケデリックな医薬品を開発するATAIライフサイエンスを立ち上げ、21年にはナスダックに上場した。彼のもち分は20%で、8月時点ではおおむね4400万ドル相当。ATAIは、ジメチルトリプタミン(DMT)からイボガイン、メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)に至るまで数種類の幻覚剤について臨床試験を実施中である。ATAIに対しアンガーマイヤーはこれまで総額4000万ドルを投資している。

「成功して、幻覚剤を医療に使えるようになれば、ATAIの時価総額は数百億ドルから数千億ドルになるでしょう」(アンガーマイヤー)
次ページ > 玉石混交の様相を呈しているアンガーマイヤーのポートフォリオ

文=ウィル・ヤコウィッツ、ブランドン・コチコディン 翻訳=フォーブス ジャパン編集部 編集=森 裕子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事