「人を資金や機会と結びつけることにおいて、並外れた能力をもっています」(ノボグラッツ)
ノボグラッツがアンガーマイヤーと初めて会ったのは10年。米国に本部を置くファンドに、ヨーロッパの金融危機にいかに対処すべきかを無料で助言をしていたときのこと。そこに、ドイツ連邦議会の議員がひとり参加していたのだ。
「流行」という言葉同様、アンガーマイヤーは「ネットワーク」という言葉にもいら立ちを隠さない。実に多くの人が、自分の望むものを他者から手に入れるためにネットワークづくりに励む、と彼は言う。働くことなど金輪際必要ではない彼は、一国の元首やかつての元首(ドイツのアンゲラ・メルケル元首相)、ハリウッドの映画スター(ユマ・サーマン)、自らをしのぐ億万長者(ノボグラッツとティール)といった各界に友人がいる「いろどり豊かな人生」を築くために時間と労力を捧げてきたというのだ。
「それをネットワークづくりと呼びたいなら、お金に置き換えてみるといい。複利のように、どんどん膨れ上がる点が共通しています」(アンガーマイヤー)
この10年間に時代を象徴するような多くの投資案件で名をはせたアンガーマイヤーだが、注目を集めたスキャンダルにも頻繁にかかわっている。19年にソフトバンクが、現在は破綻したドイツのオンライン決済企業に11億ドルを投資した際、仲介したのは彼だった。このとき仲介手数料としてアンガーマイヤーは約1200万ドルを受け取っている。
18年にオーストリアの城で開かれたアンガーマイヤーの40歳の誕生日パーティでは、彼がティールを、ロシア大統領府の外務省に勤めるロシア人ダニール・ビスリンガーに紹介したといわれている。ビジネス・インサイダー誌によると、ティールはこの事実をFBIに報告し、ビスリンガーからサンクトペテルブルクでの会議に招かれ、ウラジミール・プーチン大統領との面会をオファーされたという。ビスリンガーは22年にも、プーチンとの会談というオファーをティールにしたと見られている。
「私の誕生日パーティに参加してくれた友人2人が、その際に知り合ったのです。友人が何をしようが、私の知ったことではありません」(アンガーマイヤー)
貧しかった少年が、25歳で億万長者に
アンガーマイヤーは、チェコ共和国からさほど遠くない人口200人のドイツの村トリーベンドルフで貧しい子ども時代を過ごした。父は建築作業員で、母は子育てのために秘書の仕事をやめて家庭に入った。アンガーマイヤーは、幼少期からビジネスに取りつかれていた。小学校時代の彼の最初のプロジェクトは請求書づくりだった。6歳のときに両親に連れられてアニメ映画を見て、映画も気に入ったが、両親が映画を見るためにお金を払ってチケットを手に入れた事実に大きな興味をもった。帰宅するなりテレビのリモコンを独占し、両親がテレビを見ようとするたびに視聴料をとるようになった。「両親は、今でこそ私のことを誇りに思ってくれていますが、心底心配していました。どこで育て方を間違えたんだろうってね」(アンガーマイヤー)