小惑星(99942)アポフィスは直径約340mで、太陽を約324日周期で公転している。2004年に発見された当時、2029年、2036年、2068年のいずれかに地球に衝突する危険性があると指摘されたため、エジプト神話における闇と混沌の化身アペプ(アポピス)にちなんで命名された。天文学者らは当初、地球に衝突する確率を2.7%と見積もっていた。
その後、2021年に米航空宇宙局(NASA)がより正確な軌道分析を行い、衝突のおそれはないとの判断を下した。しかし、新たな研究により、少なくとも部分的には当初の懸念が復活した格好だ。
アポフィスの軌道が変わる可能性
現在の軌道のままなら、アポフィスは地球に衝突することはなく、2029年4月13日に地球から約3万2000km以内まで最接近するとみられている。このサイズの小惑星がここまで地球に接近し、静止軌道の内側を通過するのは観測史上初めてとなる。しかし、最新のシミュレーションによると、アポフィスに別の小天体が衝突した場合、軌道が変化する可能性がごくわずかながら存在するという。仮にそうなれば、地球に壊滅的な被害が及ぶかもしれない。
オンライン科学誌Planetary Science Journalに掲載された論文では、地球に頻繁に落下する隕石のような小天体がアポフィスに衝突し、軌道を変える可能性について研究した。筆頭著者であるカナダ・ウェスタンオンタリオ大学のポール・ワイガートは、「未発見の小天体がアポフィスと衝突し、危険な結果をもたらす可能性は極めて低い」と結論づけている。