アプリ開発やグローバルマーケティングを展開するフォーイットは、18歳から69歳までの男女500人を対象にリスキリングに関する調査を行った。それによると、リスキリングなどの自己研鑽を実施している人は全体の3割に満たない。リスキリングを実施している人でもっとも多かった方法は、書籍や専門誌の講読で、オンライン学習や社内のトレーニングプログラムに参加する人はごくわずかという結果となった。
年齢別では若い人ほどリスキリングに取り組む割合が高く、学校で学ぶことが多い10代を除いては、もっとも積極的なのが20代で、書籍、オンライン学習、社内トレーニング、外部セミナーなど、いずれも高い割合を示した。
割合が少ないにせよ、若い人がスキルアップに意欲を示しているのは喜ばしいが、ひとつ気になるのが世帯年収別の調査結果だ。年収500万円以下、501万円から1000万円以下、1001万円以上の3つの区分で明らかな違いが現れた。
世帯年収500万円以下ではリスキリングに取り組んでいる割合は2割弱、1001万円以上では4割弱となる。書籍購読を除くすべての手段で、年収1001万円以上の人たちの実施割合が高い。年収が多い人は自身のキャリアを通じて自己研鑽の効果や重要性を認識していて、「さらなるキャリアアップのために学び続ける動機づけが強い」とフォーイットは分析している。
社内研修やトレーニングに注力できるのは大手企業だと思われる。低賃金の中小企業ではそうしたチャンスは期待できない。大学のオンライン講座を受講できる大規模公開オンライン講座「MOOC」のように無料で受けられる学習サービスや、受講費用の一部を援助してくれる厚生労働省の「教育訓練給付制度」など、リスキリングのための経済的な支援があり、世帯年収が低い人たちにもチャンスが提示されているが、そうした人たちのリスキリング実施率が低いのは、別の理由がありそうだ。ひとつ考えられるのは、時間的余裕だ。仕事が忙しすぎて、それどころではない状況なのかもしれない。世帯年収500万円以下の人たちでもっとも多かったリスキリング方法が書籍や専門誌の講読だったことも、それが経済的にも時間的にもいちばん手ごろだからではないか。
勉強できる時間が持てること。そこから考えなければ、本当にスキルアップが必要な人たちにチャンスは与えられず、年収の格差はますます広がるであろうことを、この調査は示している。
プレスリリース