2本の腕で歩き、シェルターになるゴミを集めるメジロダコ
メジロダコ(学名、Amphioctopus marginatus)は、捨てられたココナッツの殻を熱心に集めるので、英語では「ココナッツオクトパス」と呼ばれる。世界中の海に広く生息するこのタコは小型で、時にはヒョウモンダコより小さいこともある。ココナッツの殻や貝殻に身を隠すことを好み、2つの貝殻の間に潜り込んで、捕食者をやり過ごすこともよくある。
メジロダコは、海中の貝殻などを使って、用心深く「巣穴」を隠す。このタコの隠密行動は徹底していて、天敵が接近したり、なんらかの脅威を感じたりすると、集めておいたゴミのかげにすばやく隠れる(彼らのコレクションには、ココナッツの殻や貝殻だけでなく、瓶や缶なども含まれる)。
このような「道具」の使用は、無脊椎動物では初となる道具使用の証拠といえるかもしれない。このタコの、人間じみた行動はほかにもある。2本または4本の腕だけを使って歩き、残りの腕を、殻の運搬や、殻への擬態に使うことがあるのだ。
メジロダコの繁殖能力は高く、メスは1度に最大10万個もの卵を産むことができる。
「世界一美しいタコ」、メスはオスの1万倍のサイズ
英語でブランケットオクトパスと呼ばれるムラサキダコ(学名、Tremoctopus violaceus)は、長くたなびく布のような皮膜を持っている。ムラサキダコ属は4種からなり、中には、過去数十年間でほんの数回しか観察されていない、極め稀な種も存在する。こうしたムラサキダコを目撃したことのあるダイバーや研究者、その他の人々の多くは、この種こそ世界一美しいタコだと考えている。ムラサキダコは脅威を感じると、長い網のような皮膜をためらいなく切り離し、天敵の体に絡ませて逃走の時間を稼ぐ。狩りの方法も変わっていて、クラゲの触手をちぎって、獲物を「釣る」のに使う。
ムラサキダコの雌雄の体格差は、すべての動物のなかで最大だ。メスの平均全長は皮膜も含めると1.8~2.1mに達するが、オスは4cm弱しかない(もちろんオスには、毛布のような皮膜はない)。
ムラサキダコの交尾行動は、捕食行動に負けず劣らず奇妙だ。メスはオスの腕をちぎり取り、外套腔にしまい込む。そして、後に準備が整ってから受精に使う。意外ではないと思うが、オスは交尾直後に死ぬ。
世界の海には300種ものタコが生息しており、いずれ劣らぬ驚異の生物だ。極地の海から、熱帯の海草が茂る浅瀬まで、さまざまな生息環境で生き抜けるよう、彼らは進化してきた。タコの知能とカモフラージュ能力は、動物界でも屈指のレベルだ。
(forbes.com 原文)