日本のテイストを米国の家庭へ。新・調味料ブランド「Cabi」の野望

現在展開する3商品は、島根、長野、和歌山の蔵と開発した。年内には新商品の発売も予定している。(c)Cabi

現在展開する3商品は、島根、長野、和歌山の蔵と開発した。年内には新商品の発売も予定している。(c)Cabi

2022年に創業した「Cabi(キャビ)」は、現在米国の約500の小売店で展開されている日本の発酵調味料ブランドだ。共同創業者の野村美紀と宮城エリが出会ったのは今から約10年前。ともに米国を拠点とし、ベンチャーキャピタリストをしていた野村も、クリエイティブディレクターの道を歩んでいた宮城も、漠然と「日本と海外をつなぐ架け橋になりたい」という思いを抱いていた。
Cabi共同創業者の野村美紀(左)と宮城エリ(右)

Cabi共同創業者の野村美紀(左)と宮城エリ(右)

テーマを模索するなか俯瞰してみると、米国ではK-POPを筆頭とするエンタメが人気を博し、アジア文化への評価が高まっていた。それに伴い、韓国、ベトナムなどの調味料の新しいブランドが誕生。しかし、同様にアップデートされた日本の調味料はまだ存在していなかった。

「日本食の人気に反して家庭に普及していないチャンスを見た左脳的な部分と、ともに食べ物が好きという右脳的な部分が重なったのが日本の調味料でした」(野村)
 
コロナ禍に本格的に動き出し、日本各地の蔵にプレゼン。共感してくれた3つの蔵元と提携して生み出したのが、醤油、味噌、米酢をアレンジした3品だ。例えば米酢は、柚子果肉と甘みを加えてドレッシングのように使えるものに、味噌は便利なチューブタイプにするなど、味・デザインともに米国の家庭向けにチューニングした。「カリフォルニアロールは寿司ではないと線引きされたりもしますが、その融合を『ジャパニーズ・アメリカン』と肯定して、新しい食文化をつくれたら」と考える。
 
未経験だった食ビジネスでは、契約書締結、物流や在庫管理、資金繰りなど、さまざまな困難に直面した。そこで手を差し伸べてくれたのは、先輩経営者たちだ。「過去に培ったネットワークに加え、現地の同業創業者たちに助けられました」。サポーターを増やしながら目指すのは、日本の調味料ブランドといえばCabiという存在になること。「次のキッコーマンに」と野村は照れながらも「本気です」と宣言する。

すでにスノーピークやエースホテルなど企業からコラボレーションの引き合いも多く、「今いる場所が間違っていないと確信している」という。これまでは、食への意識が高いハイエンド層向けに展開してきたが、今後は、ホールフーズマーケットのような“プレミアムマス層”をターゲットに、販路と認知の拡大に取り組んでいく。その結果、逆輸入的にCabiが日本上陸する日も、きっとそう遠くないだろう。

Cabiのサイトでは、商品を使ったレシピのほか、パートナーである蔵のストーリーや日本の発酵文化も発信している。

Cabiのサイトでは、商品を使ったレシピのほか、パートナーである蔵のストーリーや日本の発酵文化も発信している。(c)Cabi

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