なお、賞のプレゼンターとして、都倉俊一文化庁長官と奈良出身の映画監督、河瀨直美が登壇。都倉長官は、政治や経済を超越する“文化”というソフトパワーの力を訴え、「歴史を受け継ぎ、人間の営みを具現化し続けてきたのが長寿企業である」とエノキアン協会のメンバーに敬意を表すと同時に、「伝統や遺産は常に最優先すべき」と文化の支援への想いとビジョンを伝えた。
エノキアン協会のアルベルト・マレンギ会長(イタリアのカーティエラ・マンタヴォーナ社会長)によれば、「この10年で10社が新たに加盟した一方で、5社は会社の売却を決めた」と後継者問題は深刻であり、「協会ではNEXT GENという“次世代”の交流の場を設け、ファミリービジネスの哲学や精神の継承に力を入れている」という。
長年エノキアン協会の事務局長を務めてきたリポビッジ・ゲラルドは、「所属企業は事業も規模も異なり、長寿の秘訣を見出すのは難しいが、一つ共通点があるとしたら長期視点であるということ。その他の企業と、時間の考え方が違う。株主のポケットではなく、次の四半期でなく、次の世代を考えるという視点を持つことで、未来に投資できるようになる。長期視点、それによって結果的に長く続くのでしょう」と本質を語る。
シャトー・デュ・クロ・ルセのフランソワ・サン・ブリス会長は、「今回の奈良滞在で、『今続いている』ということは、新しい革新を続けているからこそであるということを改めて感じました。それこそまさにエノキアンの精神です」と開催地での気づきを共有した。
「最大たるより最良たれ」という竹中統一の言葉が、エノキアン協会を通して世界に広がっていったのではないだろうか。