「AIスティーブ」と「AIあんの」
——なぜでしょうか?
安野:これにはいくつかの要因があります。1つは、日本は社会の分断がEUやアメリカに比べると圧倒的に少ないことです。まだ1つの集団として新しい仕組みを導入していこう、という議論ができる状態だと思います。もう1つ、AIなどの新しい技術を政治に活用することに、日本は非常に前向きな人が多いところもポイントです。
例えば東京都知事選で「AIあんの」を運用しましたが、大変好意的に受け止められました。
実はその3日前に行われたイギリスの総選挙でも「AIスティーブ」を使った活動をした候補者がいた。でも日本とイギリスでは受け入れられ方や得票数が全然違うんですね。イギリスではジョークだと捉えられるのです。
端的な例で言うと、AIと聞いた時に欧米の方々は「ターミネーター」を思い浮かべますが、日本だと「アトム」とか「ドラえもん」を思い浮かべる人が多い。良くも悪くもそんなにアレルギー反応がないのです。そして、そもそも日本は労働人口がどんどん減ってきているので、法人や組織としてもAIを取り込んで、自動化できるところをしていこうと前のめりで取り組んでいる所も多い。
デジタル民主主義という新しい「仕組み」が日本から始まっていく可能性が高いと思うのは、そういったことを考慮してのことです。私にも何か重要なことが出来るのではないかと期待しています。
安野貴博(あんの・たかひろ)◎AIエンジニア。SF作家。起業家。東大松尾研からボストン・コンサルティング・グループを経て、M-1グランプリにロボット漫才で出場を果たし、LLM(大規模言語モデル)を応用実装する企業などを連続起業。さらにロイヤル・カレッジ・オブ・アートで生成AIも駆使し準修士を取得後、執筆したSF小説で新人賞受賞。まさに博覧強記、「令和のダヴィンチ」だ。2024年には東京都知事選にも出馬、従来の「ブロードキャスティング型」の代わりにAIを駆使して有権者の声を聞き取る「ブロードリスニング型」の選挙戦を展開、得票数15万票で第5位となる。2024年、「Forbes JAPAN カルチャープレナー30」に選出された。
東修平(あずま・しゅうへい)◎大阪府四條畷市生まれ。京都大学で原子力について学び、修士(工学)を取得した後、外務省へ入省。二国間・多国間の自由貿易協定交渉に携わる。その後、野村総研インドに転職し、アジア新興国を中心に企業の戦略策定を支援。父の病をきっかけに地元の現状を知り、生まれ育った故郷を未来へと繋ぐべく、出馬を決意。2017年1月、28歳で初当選。対話を重視したまちづくりを理念に掲げる。公民連携による施策を多数展開し、11年ぶりの人口の社会増を実現。また、徹底した行財政改革により、31年ぶりの財政構造の健全化を達成。デジタルを活用した全国初施策も多数創出。