マニフェストは訂正し続けよ。政局より政策を
——政治における課題の1つが「ポピュリズム」だと言われています。人気取り政策だったり、敵を作ることによって支持を上げていくような政治スタイルです。こうしたポピュリズムとは一線を画するような、新しい政治を志向することは可能でしょうか?
安野:敵対するようなポピュリズムではなくという意味で、私は選挙期間中に「政局よりも政策を見てほしい」という話をしました。建設的に物事を論じて行くためには、人対人の攻撃をしたり、揚げ足取りをするのが最善の戦略だというステージから抜け出して、戦いのルール自体を変えていく。
都知事選でも、公表したマニフェストを適時訂正、反対意見なども取り入れながらアップデートをし続ける取り組みを行いました。このように、「マニフェストをアップデートし続ける」試みには、建設的に議論を前に進めるという意味合いもあります。
東:政治家の論戦はどんどん大きくなる性質があり、相手を負かそうと「大言壮語的」になっていく。そして、その政治家を倒そうと、新しい政治家がまた大言壮語を口にする、という負のループが起こるわけです。
僕が行政面で大事にしていたのは、たとえ魅力的な政策であっても、誇大にプレスリリースしないことでした。しっかりと丁寧に行政運営をして、暮らしが良くなったな、とか便利だな、と市民の皆さんに感じてもらう。丹念に手順を踏むことでようやく、政治や行政は信頼されていくと思っています。
「仕組み」レベルの変革を
——お二人が見据える未来とはどのようなものなのでしょうか?東:もう長いこと、「政治に期待しない」という空気感があります。政治的無関心は良くないと思いつつも、気持ちはわかる。何かが変わる気が全くしない。既存のルールの上で今まで通りに戦っていたら、いくら人が変わったとしても同じことが続いていくだけなのです。
だから、そもそもの「仕組み」のところを変えていかないといけない。例えば後継者を公募する、そしてその人たちを継続的に評価する仕組みを作っていく、といった取り組みもそうですし、安野さんの、デジタルテクノロジーで何かを変える取り組みもそうだと思います。
「仕組み」レベルの変革を志向していくということが、実は我々が持ちうる希望なんじゃないかなと思ってます。
安野:政治にアプローチをしていこうというなかでとくに難易度が高いのが、出馬して政治家になることです。そこに悩む人も多い。後継者を公募するという試みは、多くの人にとっていい道しるべになると思います。
東:チャレンジをしようというとき、あるべき仕組みがことごとくない、というのが今の状況です。それを打破していくためにも、多様なリーダーの選出の仕方、多様なリーダーの現れ方を実現できれば、国も生活もより良くしていけるという確信を持っています。
安野:私の取り組みは「デジタルデモクラシー」とか「デジタル民主主義」と呼ばれる領域で、都知事選のこともオードリー・タン氏やグレン・ワイル氏(Microsoft Research の経済学者)が海外のカンファレンスで広めてくださった。「日本ではここまで進んでるのか」というような意見をいただくことも多くありました。
実は、日本からデジタル民主主義の新しいモデルが生まれる可能性が相当にあると私は思っています。