困難になった再利用
「オブソリート」という言葉が顧客を不安にさせることを意図したものであるかどうかはともかく、アップルが自社製品をサードパーティの会社が再利用することを困難にしようとしているという点については、リサイクル業界の専門家たちの意見は一致している。T2セキュリティチップやアクティベーションロックなど、過去数年にわたり導入されてきた一連の対策によって、再生業者が顧客から引き取った古いMacを再販することは年々難しくなっている。
例えば、T2セキュリティチップは、顧客が旧式のMacでもmacOSより軽快に作動させることができる軽量な代替OSのLinux(リナックス)をインストールすることをより困難にした。「これらの古い機種でmacOSを引き続き作動させることはできるが、アプリのアップデートができないため、いずれは門が閉じて足切りされることになるだろう」とグラントは語る。
ヒッグスと彼の会社にとって最大の障害は、アップルの「シリアル化」を進める動きだ。これによって同社は実質的に、ある製品の部品が他の製品で再利用されることを妨げている。それはつまり、例えば、画面が壊れたMacとプロセッサに不具合のあるMacがあっても、両者の部品を組み合わせて一台のきちんと作動するMacを作り上げることはできず、どちらも無駄になってしまうということを意味する。
「これはとても不公正なことだと我々は考える。なぜなら、それによって機器を修理するための費用が大幅に高くなってしまうからだ」とヒッグスは言う。
シリアル化によって、顧客がアップル製品を修理する方法は、アップルに送るか、アップル公認の修理サービス業者に依頼するか、あるいは純正部品を取り寄せて自分で修理を行うことができる、新たに導入された「セルフサービス修理」プログラム(日本では未導入)を利用するかのいずれかになる。しかし、これらの修理で必要となる純正部品は「残念ながら非常に高価で、MacBookのディスプレイだと約700ポンド(約13万円)もする。これに対し、他の部分が壊れているMacBookから取り外した中古のディスプレイを使えば、おそらくその半値かそれ以下で済むだろう」とヒッグスは警告する。
アップルは今年の夏、「Longevity by Design(設計による長寿命)」と題したホワイトペーパーを公開し、中古部品を使った修理を再び可能にすることに向けたロードマップを提示した。だが、ヒッグスは、これが単純にMacのどの部品でも交換して修理できた昔のような状態に戻るということではなく、「厳しく規制された方法」になるのではないかと危惧している。
その一方で、十分に使えるハードウェアは、いわれなく「時代遅れ」にされていくのだ。
(forbes.com 原文)