「Grow Up」ではアーティストとしての使命や孤独と悲しみ、「Milli-Billi」では既成概念とステレオタイプの狭苦しさ、「Masterplan」と「Mainstream」では「壊すべき壁」を破壊する宣言を吐き出す。
「世界を変える」というのはあまりに大きな目標だが、「自分が変わる」ことによって同じビジョンをもった仲間が絶対に見つかり、その仲間と「連帯」をして「愛」を示し続けることで「世界も変わる」ということをBE:FIRST、そしてBMSGという会社の存在が証明し続けている。
自分らしくあること、仲間とより高みを目指すこと、そして好きなことを追求し続けること、そのことがどんどん難しくなっているのかもしれない。「チル」や「自己責任」という言葉が話題になるなかで、このような熱い信念と行動力、そして「セルフラブ」の根幹をもったグループが日本と世界で共鳴していることは、閉塞的で変化の見えない、よどんだ空気に飽きた人々の精神的な中核を突いていることを表している。
「常識」や「当たり前」が空虚な嘘だとわかりつつあり、その建前が綻んでいる今、それらをためらわずに「壊していく存在」が社会に求められている。のうのうとして生きていられた社会はもう存在しない。
であるならば、そのなかでどうサバイブしていけばいいのか。どうせ生き残るためならば、自分が思い描く理想の未来をつくればいいではないか。どうせすべてハリボテの嘘で、何もしない状態では絶望の未来しか残らないのであれば、否定され続けても、アンダードッグ(かませ犬)でも、既存の価値観のなかではマイノリティでも、自らが輝けるような世界をメインストリームにしてしまえばいい。
竹田ダニエル◎1997年生まれ。カリフォルニア州出身、在住。カリフォルニア大学バークレー校応用科学テクノロジー博士課程在学中。著書に『世界と私のA to Z』『#Z世代的価値観』(ともに講談社)。「30 UNDER 30 JAPAN 2023」受賞者。