死亡時年齢が33〜100歳の男性12人と女性3人の脳を研究者らが調べたところ、遺体8体で嗅覚を司る嗅球(きゅうきゅう)の組織にマイクロプラスチックが含まれていた。
嗅球からのマイクロプラスチック検出は、マイクロプラスチックが脳の他の部位に入り込む「潜在的な経路」を示している、と研究者たちは指摘している。
5月に発表された別の研究論文では、脳には他の臓器の最大20倍のマイクロプラスチックが含まれ、脳の質量の0.5%を占める可能性があることが示された。マイクロプラスチックが神経変性疾患のリスクを高める可能性について「懸念を抱かせるもの」と研究者らは述べている。
遺体8体の脳からは16種類のプラスチックの繊維や粒子が検出され、その大きさは5.5〜26.4マイクロメートルだった。5.5マイクロメートルというのは人間の赤血球の直径より小さい。
マイクロプラスチックが検出された遺体と、検出されなかった遺体がある理由や原因は今のところ不明だ。
最も多く検出されたプラスチックの種類はポリプロピレンで、以下ポリアミド、ナイロン、エチレン酢酸ビニルの順だった。ポリプロピレンは家具や衣類、絨毯、クリーニング用包装によく使用される。ポリアミドとナイロンは似ており、どちらも衣類やカーペットなどの繊維製品に使用されることが多い。エチレン酢酸ビニルは用途が広く、接着剤や塗料、ラップなどに使われている。
近年、マイクロプラスチックは海中や埋立地の廃棄物から人体に至るまで、あちこちで検出されている。マイクロプラスチックとは大きさが5ミリメートル以下のプラスチック片を指し、使い捨てのボトルや食品パッケージ、プラスチックペレット、または包装材や自動車部品、玩具などに使われるプラスチックが分解されて生じたものだ。
人は作物や魚、マイクロプラスチックが食品に溶出する可能性があるプラスチック製の食品容器などを通して、マイクロプラスチックを直接体内に取り込む可能性があることが研究で明らかになっている。欧州連合(EU)は昨年、マイクロプラスチック汚染を抑制するため、新たに製造するものへのマイクロプラスチックの添加を禁止すると発表した。同様の動きが米国でもあり、2020年にマイクロプラスチック汚染を抑制する法案が提出されたが、下院での審議は進まなかった。
マイクロプラスチックは人間の血液や心臓、男性の生殖器官、肺や肝臓の組織、母乳、胎盤などから検出されている。マイクロプラスチックが肺炎や肺がんのリスクの上昇、代謝障害、神経毒性、内分泌かく乱作用、体重の増加、インスリン抵抗性、生殖機能の低下と関連していると指摘する研究もある。今年初めに発表されたある研究では、動脈からマイクロプラスチックが検出された人では死亡率が高いことが明らかになった。
英紙ガーディアンの報道によると、平均的な人が体内に取り込むマイクロプラスチックの粒子数は年間5万と推定されている。他の研究では、平均的な人は週約5グラムのプラスチックを取り込んでいるとしている。
(forbes.com 原文)