日本とハリウッドのCG事情
髙比良:CGがどんどん技術がすごくなってるっていうのも、実際よくわかんないんですよ。パソコンの性能が上がってるとかそういう話なんですか?野島:僕も疑問なんすよね。結局どうやってつくるかっていう個人的な技量なんで、CG技術が上がってるってどういうことなんだろうなってずっと疑問に思ってます。
髙比良:レベルが上がっているとはプロとしても思うんですか?
野島:どうですかね。でも8年前と比べてどうかって言われると、びっくりするほど上がってるわけでもないですね。
髙比良:僕が最後にびっくりしたのは「トランスフォーマー」かもしれない。人生で一番びっくりしましたよ。嘘だろと思いました。
シャラ:私なんてどこがCGでCGじゃないかわかんないですよ。
野島:逆に今もうほぼCGじゃないすかね(笑)。
シャラ:え〜そうなんですか!?
野島:マーベルとかのハリウッド映画はそんな感じです。たまにメイキングがYouTubeに上がってるんですけど、顔だけしか使ってなかったりするんですよ。ビルから落っこちるシーンとか、服とかも全部CGで。
髙比良:たしかにハリウッド俳優さんが全身タイツ着てやってる時ありますよね。
野島:はい。髪の毛も風で動くからそれもCGで、本当に顔だけっていう。
シャラ:日本はどうなんですか?
野島:顔だけにはならないんじゃないですかね。日本ではまだ1カットにかけられる予算がそこまでないと思います。
髙比良:たしかに日本のCGって結構大騒ぎしますよね。このシーンにこんだけかかってしまいましたみたいな。CGってすごいお金かかるイメージがあるんですけど、やっぱりそれは人件費なんですか?
野島:そうですね。1個ずつちまちま絵を描く作業をしていくので、それはもう時間がかかりますし、その分人件費もかかると思います。
髙比良:なじませる作業って、本当に絵と絵を自然な絵にぼかすという感じなんですか?
野島:はい、何回も試行錯誤しながらやってます。
髙比良:なるほど。理系的な知識もあって、なおかつ絵を描けるようなセンスも持ち合わせながら、その作業を長時間続けるっていうことで、どんどん掛け算で人件費が上がる感じなんですね。
野島:そうですね、一つの絵にかかる人が多すぎて。
髙比良:『ゴジラ-1.0』で担当された水のシーンがあるじゃないですか。あれはどれぐらいの人数でつくられてたんですか?
野島:水だけだと4.5人じゃないですかね。これはあり得ないぐらい少ないんですけど。
髙比良:白組自体、割と(従業員が)少ないんですか?
野島:全体で35人しかいないです。
髙比良:それめっちゃ少ないですね。
野島:35人を8カ月間動かすって、結構金額いっちゃうんですよね。その映画に対して50カットとか担当するので、それを8カ月とかずっと続けるとなると。
日本の実写映画が米国でヒットするなんて
シャラ:やっぱり制作費って足りてないんですか?野島:僕的には現場で働いててめちゃくちゃ限界っていうイメージはないですね。山崎さんはここをもっとこうしたいとかあるかもしれないけど。
髙比良:なんかよく言うじゃないですか。日本の映画はお金がないから、海外に比べるとCGとかちょっとちゃちく見えるよねみたいな。
野島:たしかにそういう次元の話だと全然足りないですね。海外と比べちゃうと10倍とか20倍とかの予算の違いがあるので。
シャラ:なんでそんなに差があるんですか?
野島:それはもう明らかに観る人の数ですね。ハリウッド映画ってどの国でも流れるけど、日本映画は基本的に日本だけなんで。でも『ゴジラ-1.0』はアメリカでもたくさんの人に観てもらって、実写映画でこんなにもアメリカで観られるのは初めてで。今新たな歴史の第一歩みたいな感じです。
髙比良:なるほど、そういうことなんですね。
野島:僕が一番びっくりしたのその点でしたね。もちろんアカデミー賞の視覚効果部門はノミネート自体もすごいびっくりしたんですけど、それ以上にアメリカでそんなに興行いってるんだみたいな。当時吹き替えもなかったのに、ニッチな字幕映画観に行くんだって。
シャラ:結構外国の友達に言われましたもん、面白いって。観た方がいいって。
野島:東宝の方が言ってたんですけど、あれがアメリカでうけた理由は、コロナ禍にみんなNetflixとかで海外の作品を字幕で観るのに慣れてきてて、そのノリで観られたからじゃないかって。
髙比良:でも別に海外で受けようと思ったわけじゃないんですよね?