サイエンス

2024.09.10 12:30

パリ五輪「3試合すべて0点」で酷評の豪ブレイキン選手に学ぶ「自信過剰の罠」

2. 「小さな池の大きな魚」になっている

誰しも、学校でいちばん優秀だったクラスメートを覚えているはずだ。いずれは、その天才的な頭脳を駆使して、テック業界の大物になるに違いないと思っていたのではないだろうか。予想どおりそうなった人もいれば、ごく普通の社会人になった人もいるだろう。これは、「小さな池の大きな魚効果」と呼ばれる現象の絶好の例だ。

この現象は、小規模で競争がさほど激しくない集団のなかでは「自分は特別で優れている」と思っていたのに、熾烈な競争を繰り広げる環境に身を置いたとたん、悪戦苦闘してしまう場合に起こる。それほど競争の激しくない学校では優秀だったとしても、もっと激しく競い合う学校に行けば、平均か平均以下になってしまう可能性があるということだ。同じことは、アスリートや芸術家にも当てはまる。

2005年にスポーツ心理学ジャーナルの『Journal of Sport and Exercise Psychology』で発表された研究は、レベルの高いアスリートを選抜して一カ所に集めることによるメリットとデメリットを調査した。レベルの高いアスリートが、高い成績を収めた人で構成された集団に仲間入りすると、自らの能力についての自己肯定感や自己認知が低下する可能性があるという。その一方で、自分より優れた仲間を観察したり、彼らから学んだりすれば、技術向上の貴重な機会にもなる。

要するに、競争の激しい環境に身を置けば、自らの価値やスキルを客観的に推し測れるようになる可能性がある。逆に言うと、小さな集団内で競い合ってばかりいると、実際よりも実力があると思い込んでしまう場合があるのだ。

レイガンがパリ五輪を目指す過程で、こうした罠に落ちてしまったのかどうかは不明だ。しかし、ここには1つの教訓がある。「自分のスキルが優れている」と考えることと、そのスキルを他の人と比較することは別物なのだ。最高のレベルを目指すということは、厳しい環境に自ら飛び込んで実力を試し、技術を磨くということだ。そのように技術を磨いてから世界的な舞台に挑むべきだという考えに、反対する人はいないだろう。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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